日本人でただひとり。
リオパラを支えるゴールボールのレフェリー

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 吉村もと/MAスポーツ●写真 photo by Yoshimura Moto/MA SPORTS

 レフェリーをする中で特に心掛けていることは、「アウト」「ゴール」といったコールの声は大きくクリアに、笛もはっきりと大きく吹くこと。「視覚障がい者競技のゴールボールにおいて、これがレフェリーの基本です。審判として裁くというより、見えていない選手にプレーの結果をしっかりとフィードバックする感じです」と新居さん。

 音が頼りの競技であるため、プレー中は観客も静寂を守らなければならない。開始時にはレフェリーが「クワイエット・プリーズ」とコールするのだが、ブラジル戦では選手が投球するたびに観客が大声援を送り、ボールの中の鈴の音がかき消されて選手らが困惑する場面が見受けられた。こうした事態に対応するため、初日の夜に審判団による緊急ミーティングが開かれたという。「これまでもノイズが多い大会はありましたが、今回は注意を促してもなかなかやまない。そういったところをコントロールすることが課題にあがっています」と新居さんは話す。

 大学卒業後に、視覚障がい者のための総合福祉施設・京都ライトハウスに入職。1年目に障害者スポーツセンターで行なわれた体験会に参加し、ゴールボールと出会った。思いっきり全身を使うスポーツとしての迫力、緻密な戦略を駆使する高い競技性、全盲や弱視の優劣がないことに魅力を感じ、のめり込んでいった。

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