義足のハイジャンパー・鈴木徹。
悲願のメダルに近づく2m超え

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by Shingo Ito/AFLO SPORT

 7月の関東大会では自己新を狙った2m03に失敗したものの、課題は把握済みのようで、「順調に仕上がっている」と表情は明るい。

「僕は、『跳べちゃった』が怖い。(成功ジャンプを)再現できない可能性が高いから」

 現在の目標は、成功のアベレージを2mに持っていくことで、そのために向上すべき2つの課題がはっきり見えているという。

 1つはクリアランス動作だ。鈴木は左脚で踏み切った後、右腕を高く振り上げて空中姿勢に入るが、バーを越えてから右腕を下げる動作を意識して加えたいのだという。以前は首と上半身だけを動かしていたが、右腕を下げた勢いで体の回転性を高め、バーをよりスムーズにクリアすることが狙いだ。

 もう1つは踏み切り3歩前のリズムアップ。助走は最初、バーに向かって真っすぐに走っていくが、踏み切る直前の2歩ではバーに向かって弧を描きながら体を前方にひねるという技術が必要になる。このカーブでリズムよく、そして体を浮かさず、むしろ低くえぐるように重心を下げ、地面からの反発力を脚に蓄えられれば、よい跳躍につながるという。だが、失敗すれば、「反発力がマイナスに働くこともある」と難しい。ブラジルで2m02を成功したジャンプは、最後のカーブに「いい感じでスーッと入れた」といい、その記憶は鮮やかで、感覚もつかみつつあるという。

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