リオ代表争いに火花散る、日本パラ陸上選手権の注目選手たち (3ページ目)

  • 星野恭子●文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by Shingo Ito/AFLO SPORT

群雄割拠のT54 を制すのは?

 T54クラス(車いす)の男子中長距離陣は群雄割拠の状況で、激戦が予想されるが、絶対的エース、樋口政幸(プーマジャパン)が一歩リードする。ロンドンパラリンピック出場後に、トラック種目専念を決め、練習や体づくりを見直し、着実に力をつけた。国際大会でのメダル獲得も多く、経験豊富だ。昨年は、10年以上も破られていなかった800m、1500mの日本記録を塗り替えた。欧州勢に加え、タイや中国選手も台頭するなか、IPC陸上競技グランプリファイナルへの出場を果たし、1500mで銅メダルを手にした。さらに、代表主将も務めたドーハ世界選手権でも1500mと5000mで入賞を果たすなど、強さを見せている。リオ代表に決まれば2度目となるパラリンピックに向け、日本一の称号をいい弾みにしたいところだ。

 そんな樋口の背を追う選手のなかでは、成長株の鈴木朋樹(関東パラ陸上競技協会)に注目したい。現在大学4年生の鈴木は小学校時代から車いす陸上を始め、体の成長とともに実力も伸ばしてきた。昨年は初の世界選手権代表となり、800m、1500mに出場。入賞は逃したものの、トップ選手に果敢に食らいついた積極性が高く評価された。同年、2月の東京マラソンにも出場し、初マラソンながら2位に入って注目され、今年も5位と健闘したが、本人は、「コースの起伏などに左右されず、常に全力でアタックできるトラック種目にこだわりたい」と話す。トラック種目で必要な瞬発力をつけるため筋力アップにも熱心に取り組む、次世代のエース候補の勢いに期待が高まる。

 なお、今年で27回目を数える日本選手権は大会史上初めて、大阪市以外での開催となる。パラリンピックイヤーに伝統ある大会を誘致した鳥取市では、会場となるコカ・コーラウエストスポーツパーク(鳥取県立布勢総合運動公園陸上競技場)のバリアフリー化に着手。車いす選手のための国内初の投てき種目用固定具の設置や段差の解消、トラックの補修など2億円以上をかけて改修したという。好パフォーマンスへの後押しを受けての記録ラッシュにも期待したい。

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