【車椅子バスケ】リオパラ出場決定。勝利へと導いた「ふたりのエース」 (2ページ目)

  • 瀬長あすか●取材・文 text by Senaga Asuka
  • 浅原満明/X-1●写真 photo by Asahara Mitsuaki/X-1

 藤本はパラリンピックに過去3回出場しているベテランである。それでもオーストラリア戦を目前にし、体育館に入った大黒柱は震えていた。

「試合のことを考えると恐ろしくなってきて......朝起きたときから緊張したのは初めてでした。でも、キャプテンとしての立場があるので、チームに自分の感情は入れたくない。『緊張している』とは言えませんでした」

 そんな藤本が唯一、「試合が怖い」と胸の内を明かした相手が、もうひとりのエース香西だった。

「怜央くん、俺も怖いよ」と、実際香西もこの試合に重圧を感じていたという。

 藤本はそれを聞いて「何かほっとした」と振り返る。同じ場面で緊張する"相棒"と、エースとしての重荷を分散できたことで、動きの硬かった藤本は、いつもの自分を取り戻していった。

「ふたりともエースという自覚があるからこそ、日本代表の重みを分け合える。宏昭とジャパンで一緒にやれていることは僕の強みだと思いました」と藤本が言えば、「『俺たちがエースだから、俺たちがシュートを決めなければ』とふたりで話したことはないけれど、口にしないだけでお互いよくわかっている。そのときの感情を言い合えるいい関係になってきたと思います」と香西が語る。

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