パラ陸上・高桑早生「今年になって、世界を意識し始めました」 (4ページ目)

  • 文●スポルティーバ text by Sportiva
  • 写真●五十嵐和博 photo by Igarashi Kazuhiro

伊藤 そこまで来た人が経験する試練なのでしょうか。

高桑 そうですね。もしかしたら今年は結構壁かなって。昨シーズンがわりと良かっただけに、余計に思ったりしますね。

伊藤 今、海外の選手の情報というのは、どういう形で集めたりするんですか?

高桑 世界ランキングにタイムが一緒に載るので、それで今シーズンの傾向が何となく分かるのと、基本的にはFacebookですね。各選手が記録を上げていたりとか、IPC(国際パラリンピック委員会)が記録を上げてくれていたり。あと、海外遠征に行っている陸連のスタッフが、動画や情報を上げてくれるので、意外とFacebookで情報を得ることが多いですね。

伊藤 そういう時代ですね。ビックリした(笑)

高桑 そうですね。意外とFacebookです(笑)

伊藤 アスリートの方で、ライバルの映像を見たくない人と、見て研究する人と、二つに分かれますけれども、高桑さんはどちらですか?

高桑 私は見たいです。単純に情報がまだまだ少ないので、海外の選手の走りとか、男子女子関係なく見ますね。この人どんな走りしてるんだろうとか、すごく気になるので。それに、参考になりますし、自分の走りとすり合わせて、今の方向性は間違ってないぞ、と思えたり、そうやって自分を励ましたりしてますね。

伊藤 なるほど。では、来年のリオ、20代の後半で来る東京パラリンピックまで、先は見据えているんですか?

高桑 はい、見てます。そんなに先読みをするのは得意じゃないので、どちらかというと、2020年で一回区切りをつけたいって思っているんです。競技を辞める辞めないは関係なく、とりあえず今2020年を目処(めど)に考えています。そこまでに何ができるか、そこまでに何をしなきゃいけないのか。そのためにこの1年はどこまでタイムを伸ばさなきゃいけなくて、どんなタイトルを取らなきゃいけなくてっていうのは、一応逆算しながら、その日、その1年の過ごし方を考えてます。

伊藤 そうですよね。毎年、目標やタイムはこのくらいっていうのを決めているんですね。現在の目標タイムを教えていただけますか?

高桑 別に秘密じゃないので大丈夫ですよ。13秒5っていうのがひとつのラインになってくるかなって思っています。そこさえ出れば何も怖いものなくリオに行けるかなと。ロンドンパラリンピックの優勝タイムが13秒2台なので、5を出せばメダル争いに食い込めるかなぐらいのタイムなので、今のところはそこを目指して頑張りたいなと思ってます。
(おわり)

【プロフィール】
高桑早生(たかくわ さき)・写真左
1992年5月26日生まれ。埼玉県出身。エイベックス所属。小学6年生のときに左足に骨肉腫が見つかり、3度の手術を経て中学1年生で左足ひざ下を切断した。中学校ではソフトテニス部に所属。高校入学と同時に陸上部に入部したが、元々の身体能力を生かし、陸上を始めて1年弱で日本代表に選出された。慶応義塾大学に進学すると、20歳でロンドンパラリンピックに初出場。女子100m、200m(T44クラス)で7位入賞を果たした。2014年には上尾市陸上競技選手権夏季大会で、100m(T44クラス)13秒69の日本記録を出した。

伊藤数子(いとう かずこ)・写真右
新潟県出身。NPO法人STANDの代表理事。2020年に向けて始動した「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」では顧問を務めている。2003年、電動車椅子サッカーのインターネット中継を企画、実施。それをきっかけにしてパラスポーツと深く関わるようになった。現在、パラスポーツの競技大会のインターネット中継はもちろん、パラスポーツの楽しみ方や、魅力を伝えるウェブサイト「挑戦者たち」でも編集長として自らの考えや、選手たちの思いを発信している。また、スポーツイベントや体験会を行なうなど、精力的に活動の場を広げ、2012年には「ようこそ、障害者スポーツへ」(廣済堂出版)」を出版した。

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