あるパラリンピック・チームドクターが見た「報道と現実のギャップ」 (5ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 竹藤光市●写真 photo by Takefuji Koichi

伊藤 本当にそう思います。パラリンピックのあり方のところで、IPC(国際パラリンピック委員会)がIOC(国際オリンピック委員会)に近づいて行って、オリンピックのステータスをもらってパラリンピックの地位を上げよう、価値を上げようとしているところに疑問を呈していらっしゃる。悪いことではないと思うんですけど、どうせだったらオリンピックとパラリンピックをひとつの大会として開催しようというような、あまりにも気軽にそういうふうに言う人が今増えてきているので。そこのところはすごいご指摘だなと思いました。

中村 パラリンピックはやっぱりパラリンピックの歴史とか文化を大事にしていけばいいと思うんですけどね。日本代表の誇りという部分と、トレーニングを重ねた上で代表に選ばれるという部分では同じなんでしょうけど、歴史的な背景だとか文化とかは違っているのかなと思います。
(つづく)

中村太郎(なかむら たろう)・写真右
1960年9月14日生まれ。大分県出身。大分中村病院の理事長と、社会福祉法人「太陽の家」の理事長を務めている。父である中村裕(ゆたか)氏は、1964年の東京パラリンピック開催に尽力され、「パラリンピックの父」と呼ばれているが、その意思を受け継ぎ、障がい者の方が社会復帰を目指すサポートや、パラスポーツにも深く携わっている。2000年のシドニーパラリンピック、2004年のアテネパラリンピックではチームドクターを務めた。パラスポーツに関する著書としては、2002年「パラリンピックへの招待―挑戦するアスリートたち(岩波書店)」がある。

伊藤数子(いとう かずこ)・写真左
新潟県出身。NPO法人STANDの代表理事。2020年に向けて始動した「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」では顧問を務めている。2003年、電動車椅子サッカーのインターネット中継を企画、実施。それをきっかけにしてパラスポーツと深く関わるようになった。現在、パラスポーツの競技大会のインターネット中継はもちろん、パラスポーツの楽しみ方や、魅力を伝えるウェブサイト「挑戦者たち」でも編集長として自らの考えや、選手たちの思いを発信している。また、スポーツイベントや体験会を行なうなど、精力的に活動の場を広げ、2012年には「ようこそ、障害者スポーツへ」(廣済堂出版)」を出版した。

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