あるパラリンピック・チームドクターが見た「報道と現実のギャップ」 (4ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 竹藤光市●写真 photo by Takefuji Koichi

伊藤 チームドクターのお仕事は具体的にどんなことがあるのでしょうか?

中村 まずひとつは、障がいのレベルでクラス分けを行ないます。大分車いすマラソンなどでもクラス分けをしていたのですが、クラスファイアー(クラス分け委員)の資格を持っている人がやるわけではなくて、僕が先輩とか後輩の医者に声を掛けて、「今度車いすマラソンがあるから来てくれ」みたいなことでやっていました。でも、シドニーパラでは、すごくクラス分けが厳密で、それにドーピング検査もその時から始まったんです。

伊藤 日本国内で行なわれる大会とパラリンピックで違いを感じたんですね。

中村 正直、僕はずっと、広い意味でパラスポーツって社会復帰のためのリハビリだろうと、それまで思っていたところがありました。しかし、パラリンピックに行って、本当にこれは競技スポーツというか、エリートの方たちのスポーツなんだという認識に変わりました。

伊藤 そういうところで、報道と現場で見る選手たちの姿にギャップを感じたんですね。それを伝えていこうということで、執筆されたわけですものね。

中村 最初はもっと学術書みたいな感じで、医学書に近いものだったんですけど、編集者の方が、こういう一般向けに出しましょうというので、途中に選手のストーリーを入れた本になっていきました。

伊藤 読みやすくしていただいた感じですよね。

中村 そうですね。多分この本の中で課題にあげている、商業主義であったりドーピングの問題、先進国と途上国の車椅子の差などは、2002年当時とあまり今も変わってないと思いますけどね。

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