車いすテニス・上地結衣「世界1位になるのが早過ぎた」 (2ページ目)

  • 文●スポルティーバ text by Sportiva
  • 写真●五十嵐和博 photo by Igarashi Kazuhiro

伊藤 どうしてうまくいき過ぎちゃったんでしょう(笑)

上地 うーん......。悪いことではないとは思うんです。本当に自分のやるべきことを一生懸命やって、やらないといけないことがより正確に分かって。これを良くすれば勝てるとか、良くなっていくということを想像して、それが本当にその通りになったんですよね。ただそれは、追いかける立場だったからできたことであって、今追いかけられる立場になって、より難しくなりました。どういうふうにしたら"勝てるか"ではなくて、"勝ち続けられるか"なので、難しいところではありますね。

伊藤 やはり、勝つことと勝ち続けることは違いますか?

上地 自分が今まで想像していなかった世界というか、イメージが持てなかったところなので、違うと思います。

伊藤 でも、早過ぎるとはいえ、1度そこで世界の一番上が見えたことは確かですよね。

上地 そうですね。なので、今は10月のアジア大会で負けたことも、11月のシングルスマスターズで負けたことも、良かったかなと思っています。本当に2016年と2020年で悔しい思いはしたくないので、今のうちにそういう経験をして、同じ状況、同じ心理状態になった時に、いかに対処するかという勉強にもなりました。ひとつの経験として、次に生かすことができれば、この負けは無駄じゃなかったと思えると思います。

伊藤 今お話に出てきたアジア大会ですが、準決勝で敗れたのには驚きました。

上地 そうですね。他のところでも結構言われるのは、「もちろん金メダルを狙っていますよね」「優勝できますよね」みたいなことが本当に多くて。もちろん自分も世界ランキング1位として臨む初めてのアジア大会で、前回が1回戦負けだっただけに取りたいタイトルのひとつではありました。ただ、いくらアジアとはいえ、そう簡単ではないことも分かっていて。実際に負けたタイの選手(KHANTHASIT Sakhorn選手)は、今まで自分が1度も勝ったことのない選手でした。

伊藤 最近ではいつ対戦しましたか?

上地 3年前のロンドンパラですね。彼女は本当に、タイの国柄なのか、金銭的な事情なのか、なかなか海外の大会には出てこないんです。アジア大会に懸けてきていて、今回も優勝してリオパラリンピックの出場権を獲得しました。この後はおそらくほとんど大会に出ないんじゃないかなと思いますね。

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