名古屋場所で好発進を決めた一山本。錣山親方がその強さの秘密を徹底解剖 (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 先場所も幕内力士で最速の10日目に勝ち越すなど、力をつけているところを見せていた一山本。それには、いくつか理由があります。

 まずは、突っ張りの手の回転数が増えたこと。次に立ち合い。頭から当たって突っ張っていくのが突き相撲の基本ですが、突っ張っていく途中でも頭で当たって、そこからまた突っ張って、というのを何度か繰り返してできるようになったことが大きいです。

 うちの阿炎と、一山本の体型、相撲のスタイルは「似ている」とよく言われます。リーチが長い力士が前傾姿勢で相撲をとったら、相手はまわしをとることができません。そうすることで相手への圧力も増し、リーチの長い力士は自分のペースで相撲をとることができるのです。

 一山本は大学卒業後、北海道の町役場で社会人を経験してから角界入りした、変わった経歴の持ち主でもあります。ヒザの負傷などで苦労した経験もあり、そうしたことも今の相撲に生かされているのかもしれません。

 他の力士に目を向ければ、琴ノ若(前頭2枚目)は今場所もいいですね。今年に入ってから、彼は場所ごとに力をつけていますが、どんどん腰が重くなっている印象です。初日から、正代、御嶽海と大関に真っ向勝負で臨んで、見事な勝利を飾りました。

 ただ3日目は、大関・貴景勝に張られて脳震盪気味になって敗れてしまいました。琴ノ若はまだ上体が高いところがあって、貴景勝にとって張りやすい形になってしまったことが敗因でしょう。もう少し前傾姿勢で相撲をとることが、今後の課題となるかもしれません。

 それでも、初場所(1月場所)11勝、春場所11勝、夏場所(5月場所)9勝と勝ち星を積み重ねてきた琴ノ若。にもかかわらず、いまだ三役昇進が叶っていないのは、現在の三役陣も奮闘を続けて番付に空きがないからです。そういう意味では、琴ノ若はすでに三役級の実力者であることは間違いないでしょう。

 翻(ひるがえて)って、心配なのは大関・正代です。カド番の今場所も、初日から黒星を重ねて元気がありません。

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