秀岳館、松戸高校...、表面化する部活動での暴力。伊藤華英が考える「帝国」を打破する方法と第三者の必要性

  • text by Sportiva
  • 廣瀬久哉●撮影 photo by Hirose Hisaya

選手を一人前として扱う

 また先生の指導方針も、根本から変える必要があるところも存在するでしょう。高校生は大人から見たら未熟に見えますので、一方的に指示を与えがちです。未熟だからこそ、指示を守らないと、それを正そうとして暴力にもつながる可能性が出てきます。

 選手たちも「自分たちには決定権がないんだ」と感じるようになり、先生の指示に従うだけになってしまいます。選手たちの自立心を育てるためにも、一人前の大人として対応し、自らの頭で考えさせることが必要だと感じています。相手が一人前の大人であれば、暴力に頼る考えは、まず出てこないでしょう。

 その意識をベースにすることが大切だと思いますが、先生も完璧な人間ばかりではありません。時には選手たちの態度や返答に、怒りが込み上げてくることもあるでしょう。今は先生に権限が集中してしまい、その分プレッシャーも相当なものだと想像できます。私の知る限りでも、悩みやストレスを抱えている先生は多いです。

 先生による暴力を根絶するだけでなく、先生へのメンタルヘルスという観点からも、第三者の目が必要なのかもしれません。

「お腹が痛い」では伝わらない

 そのひとつの例として挙げられるのが、女子選手の月経への対応です。ここから大会に向けて頑張らせなくてはいけない時期に、「(月経で)お腹が痛い」と言って休む選手がいるそうです。先生からしたら、「練習がきついから休みたいんじゃないのか」と疑ってしまうことがあると言います。

 しっかりとした信頼関係が構築されていれば、ちゃんと理由を説明して双方納得のうえで休むのか、休まないのかを判断できると思いますが、中学3年間、高校3年間という短い期間のなかで、部員数がひとりやふたりではないので個別の信頼関係を構築するのには、時間が足りない印象があります。

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