「天才ほどいきなりいなくなる」寺本明日香が語る体操女子の難しさと、指導者としての夢「挫折した選手を手助けしたい」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 近藤みどり●撮影 photo by Kondoh Midori

女子選手ならではの難しさ

ーーその後は、下から突き上げてくる選手があまり出てきていませんね。

寺本 出てこないので、私たちが「まだやる」となって。でも女子は難しくて、ジュニアの頃に「この子はすごい」と思っていた子が、いきなりいなくなったりする。体も変わるし心も変わるから、すごく複雑です。努力する子は徐々に安定するけど、天才ほどいきなりいなくなるんです。

ーー女子の場合、体の変化も早く始まる難しさがあります。

寺本 高校生くらいでちょっと成長しきれていない年齢が一番動けるけど、20代になっていくとだんだん動けなくなってくる。だからロシアなどにはめっちゃ若い子がいっぱいいるじゃないですか。そういう傾向になりやすい競技なんです。

ーー自身も難しい時期をくぐり抜けてきたと思います。自分の体と日々対話を続けていたのでしょうね。

寺本 私はどんな手を使っても、全日本に間に合わせるみたいな気持ちがありました(笑)。だから体に痛みが出るし、毎年我慢してやってきました。痛みが出るというのも本当はよくないことだけど、多少は我慢しなければ続けられないし、世界で戦う力は出せないと思っていた。何かを犠牲にしないと無理なところもあるかなと。それも大事だと思います。

ーー体が変わっていくなかで、常に微調整しなければいけないという、大変な競技だと感じます。

寺本 体の微調整も、20代になってから少しずつわかり始めるんです。でも、性格にもよるけど、私は練習をいっぱいしすぎちゃうタイプなのでオーバーワークになることが多く、それを止める先生がいないとダメでしたね。休むのが怖いんです。練習をしないと試合で失敗をしちゃうんじゃないかと思って。それで体だけではなく心も壊れて......。

 東京五輪が終わったあとはリラックスしてから今年の全日本に臨んだけど、やっとこのくらいの練習量でいいんだなというのがわかりました。本当に大丈夫かなというくらいの練習量でも、長年やってきていたので体が動いてできてしまう。24〜26歳くらいになれば、そのくらいで十分なのだな、と思いました(笑)。

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