ロコ・ソラーレが日本選手権で優勝できたのはなぜか。ディティールを突き詰めた総合力の高さを証明した (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・文 text by Takeda Soichiro
  • photo by(C)JCA

 実際、そのシートDで行なわれた北海道銀行とのプレーオフ、中部電力との決勝の2試合で、相手に複数点を許したのは1エンドだけ。ラウンドロビン同様、ビッグエンドはなかったものの、先攻で1点与えて後攻で複数点を奪うカーリングの基本に立ち返ったかのような戦いぶりで頂点に立った。

 準優勝の中部電力のパフォーマスも悪くはなかった。ロコ・ソラーレとの決勝では、1エンド目に1点をとらせて迎えた2エンド、セカンド鈴木みのり、サード中嶋星奈のヒットロールを足がかりに、2点、あるいは3点まで視野に入る好形を作った。

 だが、ロコ・ソラーレのバックエンドは、ミスとは言えないレベルの小さな綻びさえ見逃さない。サード吉田知那美のヒットロール、藤澤のあわやトリプルというダブルテイクアウト、さらに藤澤の2投目のヒットロールと、投げた石、弾いた石すべてに役割を持たせるショットを立て続けに決め、中部電力のチャンスを1点に抑えた。「我慢できたエンドでした」とは試合後、キーエンドを質問された際の藤澤の談話だ。

 前述のとおり、中部電力にミスと呼べるようなものはなかった。ただ欲を言えば、中嶋の2投目、ダブルテイクアウトしたシューターの残す位置について、もう少し注意を払ってもよかったかもしれない。加えて、フォース北澤育恵の1投目をもう少し掃いてハウスの深くまで入れておけば、かつ2投目のウエイトと幅のとり方を念入りに確認しておけば、という悔恨が残るエンドとなってしまった。

 もちろん、それは結果論。「たられば」にすぎない。

 しかし勝ったロコ・ソラーレは、そうした「たられば」をひとつずつ潰していって、ディティールを突き詰めてきたからこそ、北京五輪で銀メダルに輝いて、今回も表彰台の一番高いところに立てるチームへと成長してきた。石ひとつ分の精度、コミュニケーションの濃度、そして予選時からファイナルを見据えている準備といった、まさに総合力に秀でたチームであることを証明しての優勝だった。

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