「コロナで引退レースもできずに陸上生活が終わった」。学生時代を不完全燃焼で終えた女性が"スパルタンレース"にかける夢

  • 石塚 隆●取材・文 text by Ishizuka Takashi
  • 田中 亘●撮影 photo by Tanaka Wataru

「すべての部分が必要な競技で、だから楽しい」

 陸上で一番過酷だと言われる中距離競技で鍛えた肉体とスキルをベースに、陣在は頭角を現していく。昨年は「SPARTAN RACE 2021 YOKOSUKA SPRINT Elite」で優勝、「SPARTAN RACE 2021 NIIGATA SUPER Elite」で準優勝するなど、出場をする国内レースでは上位に食い込んだ。

 持ち味はもちろんランニングではあるが、ウィークポイントを尋ねると「握力系の障害物ですね」と、陣在は苦笑をする。

「陸上時代は上半身の筋力を鍛えるということがほとんどなかったので、握力を主に使う障害物に弱くて、今後の課題です」

日頃からジムでレースを意識したトレーニングに励む日頃からジムでレースを意識したトレーニングに励むこの記事に関連する写真を見るこの記事に関連する写真を見るこの記事に関連する写真を見る スパルタンレールのルールの特徴として、障害物を越えられなかった場合、バーピージャンプ(スクワット・腕立て・ジャンプを1セットとして連続して行なうトレーニング)を30回などのペナルティーが課せされて、それをクリアすることで次の障害物に進むことができる。

 また戦略的に障害物にトライせず、最初からエスケイプしてバーピーをするというやり方もあるという。当然ミスなく障害物をクリアすることがタイム的にも一番いいのだが、粘ったうえでミスをすることも少なからずあり、自分の状況を鑑みリスクを冷静に判断することも重要になってくる。

「精神的な部分も重要になる競技ですね。疲労した状態でどれだけ正確に障害物をクリアすることができるか。そこは心拍数が上がっている状態で冷静に駆け引きをしなければいけない中距離と似ているかもしれません。駆け引きの部分が、スパルタンでは障害物への対応になってきますね。きついタイミングでハードルが出てきて1本目から足をつってしまい、全部で3本、足(の自由)が利かない状態でクリアしたこともありました(笑)。そういう意味では、人間としてすべての部分が必要な競技で。だから楽しいんですよね」

 そう言うと陣在は満足そうな表情を見せた。

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