代表コーチが語る競輪界の新星、中野慎詞と太田海也。大きな可能性を秘めた2人が世界水準になる条件とは

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

――まだ戦術、戦略面などの課題があるとのことですが、自転車競技で見た時、フィジカル面において世界の水準に到達できていますか。

 これは2人に限らず、すべてのナショナルチームの選手に言えることですが、フィジカル面で世界と戦えると判断された選手だからこそ、我々の強化プログラムに招いたのです。その意味では世界のトップと戦えると私は信じています。

 あとは戦術や戦略、技術、判断力の部分を備えるかどうかで、世界水準の選手になれるかどうかが変わってきます。その部分だけで国際大会では1位から24位まで順位が変わってきますので。

――ニブレットコーチも現役時代に日本で競輪選手として走っていた時期があります。その経験も踏まえ、2人が今後、世界レベルのトラックレーサーになるために、競輪でどのように戦っていくことを望んでいますか。

 日本の競輪には独特の文化がありますが、基本的には競輪もトラック短距離も同じものですので、なにより競輪で勝てる選手にならないといけません。自分の勝利にどこまで徹することができるかがひとつのポイントだと思います。

 それに重要なレースになればナーバスになり、冷静さや判断力を失うこともあります。私たちはそこをどう乗り越えるかを見ていますし、その経験は自転車競技の国際大会にも必ず生きることでしょう。コロナ禍でも競輪のおかげでレースが数多くあり、走るたびに刺激を受けているので、今後も競輪選手として技術を磨いて欲しいと思います。
日本ナショナルチーム短距離ヘッドコーチのジェイソン・ニブレット氏  (C) More CADENCE(morecadence.jp)日本ナショナルチーム短距離ヘッドコーチのジェイソン・ニブレット氏  (C) More CADENCE(morecadence.jp)――ニブレットコーチは2016年から日本で指導されていますが、東京五輪までの結果を踏まえ、今の日本と世界の差はどのようにお感じになっていますか。
 
 日本と世界との差はもうないと感じています。東京五輪ではメダルを手にできませんでしたが、そこまでの世界選手権「男子ケイリン」では3大会続けて銀メダルを取っていて、もう世界のトップと肩を並べるところまで来ています。

 今回のオリンピックでも能力からすれば表彰台に立てたはずですし、1月に強化指定に入った今の選手もそれだけの力があります。ただそのレースの日、レースの中で正しい判断をし、力を最大限に発揮できるかどうかで結果が大きく変わってくるのです。その部分が足りなかったと言えるでしょう。

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