女子チームパシュート、カナダに敗戦した理由。転倒以外に大会直前まで決めきれなかった戦法、今季の流れの悪さもあった (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

【決めきれなかった戦法】

 決勝のあとで美帆は、こうレースを振り返る。

「最初をもう少しいくべきだったかなというか、カナダに最初のほうで、もう少し差をつけることができていれば結果も違っていたのかなとも思います。結果的にはどうなっていたかわからないことですが、そこは難しく感じているところはあります。最後まで持たせることを意識しすぎて......、決して遅いラップタイムで滑ったというのではなかったけれど、『本当にギリギリまで攻めていたのかな?』とは考えています」

 4年前の平昌五輪は、W杯などで圧倒的な強さを見せつけていたことで自信を持って臨めていた。だが、今回は状況が違った。2シーズン前にはコロナ禍で、日本連盟が国際レースへの派遣を中止したため、世界で実戦の機会を得られなかった。

 そんな状況で、世界のチームパシュートの滑り方も変化し始めていた。男子は先頭交代をせずに3人が接近して滑り、うしろの選手が前の選手をプッシュしてスピードを維持させる手法を取る国も出てきた。日本チームも昨年2月の長野選抜でその方法を試し、男子はうまくいって好タイムを出したが、女子は途中で転倒して結果を出せなかった。

 そのため、作戦決定は今季のW杯に持ち越されたが、開幕戦直前には菜那がPCR検査で陽性が出て欠場となり、第1戦ではカナダに敗れた。そして第2戦のソルトレークシティ大会では先頭交代を1回に減らし、プッシュを重視する作戦で臨み、ラスト1周では同走のカナダに1秒97という大量リードを奪いながらも、その直後に先頭にいた菜那が転倒して結果には繋がらなかった。次のカルガリー大会でも、カナダに敗れて作戦を決定することができず、年が明けてから平昌五輪の時と同じ3回の先頭交代で臨むことを決めていた。

 W杯3連勝で勢いに乗っているカナダに対し、日本は実力的には圧倒的な強さを持ちながらも、W杯で自信を持ちきれなかった。それもあって、平昌五輪の準決勝では佐藤を休ませて菊池彩花を起用したように、決勝へ向けて菜那か佐藤を休ませて力を蓄えさせる作戦を取れなかったのだろう。

 五輪という大きな大会で流れを掴む難しさはもちろん、今シーズンの流れの悪さも、今回の結果につながったと言える。

 北京五輪も後半に差しかかっているが、ひとつでも納得のいく滑りをして、日本チームが笑顔で帰国できることを願うばかりだ。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る