小平奈緒、平昌五輪金メダルの裏にあった男子との練習。「男子のスピードで滑るのが当たり前に感じる錯覚」で強くなった

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 23歳で初出場した2010年バンクーバー大会以来の五輪での挑戦となる1500mから始まった小平の平昌大会の戦い。その2日後の1000mは前年12月のW杯ソルトレークシティ大会で世界記録を出していた種目だが、警戒していたヨリン・テルモルス(オランダ)に0秒26およばず2位にとどまった。

「1000mに関して世界記録は出していたけれど、本当に私は強いんだろうかと、ちょっと信じられない部分があったのでそれが出てしまった」

 小平はそう振り返った。銀メダルは獲ったが、自分らしくない滑りだったと小平と結城ともに感じていた。1500mを滑ったことで、滑りに若干のタイミングのズレが生じていた、と。そのため500mの前日練習では、男子500mと1000m出場の山中大地と一緒のスターダッシュで50mほど食らいついてタイミングを取り戻し、動きと気持ちを研ぎ澄ませていった。そして、本番は好天で気圧も少し高く記録が出にくい状況だったが、100mを10秒26で通過すると、そのあとの400mも最速の26秒86で滑りきって残り2組の結果を待った。

【順位ではなく、自分自身と戦う】

 36秒台を本番であっさりと実現した小平は、記者からの「記録を見て勝てると思ったか」との質問に少し唖然とした表情を見せ、「これで金メダルじゃなかったらしょうがないなと思いました。だからそのあとは競技者としてではなく、友人として李相花のレースを見ていました」と笑みを浮かべた。

 タイムトライアル後は、「本当に戦うべきは順位ではなく、タイムや自分自身だなと考えていた」と話した。そして、結城コーチも「小平は36秒台という数字が見たいというだけの気持ちになっていた。それで負けたら、誰に何と言われようとしょうがないというような達観した気持ちで。だから試合へ向けては期待されるプレッシャーというより、むしろ集中力を高めていました」と語った。

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