小平奈緒、平昌五輪金メダルの裏にあった男子との練習。「男子のスピードで滑るのが当たり前に感じる錯覚」で強くなった (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 さらに、そのあとの世界スプリント選手権カルガリー大会で36秒75と36秒80を出し、6人目の36秒台ホルダーになると、1000m2本との短距離総合の世界記録も樹立した。

 小平の口から低地リンクの36秒台という数字を聞いたのは、そのシーズン終了後だった。「(2017年)1月に新しくしたブレードも、ノルウェーのW杯最終戦ではわりとハマッてきていた。その時は37秒14だったけど、あと2、3レースしたら、もしかして低地のリンクでも36秒台が出せるのかなという期待が生まれたんです」と笑顔で語っていた。

【男子選手との練習を直訴】

 そのあと、平昌五輪シーズンへ向けて準備はすぐに始められた。オランダから帰国して「自分に必要」と直訴して始めた男子選手との氷上練習の精度も前年より上げた。体格の大きな男子選手のうしろについて同じストロークで滑るために、筋力や体脂肪などの体組成をより男子選手に近づけるだけではなく、独自のストレッチも考えて体全体を効率よく使って大きな滑りをできるように努めた。

「今までは女子のなかで速い選手になりたいという考えだったが、男子と練習しているとスピードやタイムの基準が男子の考え方にリセットされて、そのスピードで滑るのが当たり前のように感じる錯覚も出てきている。実際は女子で戦うのでそのなかの順位も大切だけど、結城先生は『今の男子の滑りが10年後の女子の滑りになる』とよく言う。その点ではスケートを磨くというか、スポーツとして高める意識がすごく強くなっています」

 こう語った小平は、「男子に引っ張ってもらうだけではなく、たまには引っ張って練習に貢献できるようにもなった」とも話していた。そうした準備は、平昌五輪シーズンのW杯第2戦スタバンゲル大会(標高48m)で形になった。37秒08、37秒07と立て続けに低地の世界最高を塗り替えたのだ。そして、平昌入りしてからも2月7日のタイムトライアルではアウトレーンスタートで37秒05を出し、36秒台は目前だった。

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