高梨沙羅「まだ金メダルの器ではなかった」と言いながらも平昌五輪で得た自信。見据えた未来は「北京で金」

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

【4年前の自分に「楽しくできたよ」】

 その勝負は惜しいところもあった。1本目は103.5mを飛んで120.3点を獲得したが、ほぼ同じくらいの向かい風だったルンビは105.5mを飛んで125.4点。強めの向かい風で106.5mを飛んだアルトハウスは123.2点で2位。上位3人が抜け出す形になったが、ともに勝つ可能性を持つ接戦になったのだ。

 2本目が始まってしばらくすると、風が弱まってゲートは最初の25番から27番に上げられ、風の有利不利が如実に出てくる展開になった。1本目7位のニカ・クリズナー(スロベニア)が104mを飛んだため、次のカロリナ・フォクト(ドイツ)からゲートは25番に戻された。そのなかで高梨は秒速0.25mという弱い向かい風の条件でのジャンプとなり、103.5mを飛んで123.5点を獲得。合計を243.8点にして2位に13.1点差を付ける暫定1位で、メダル獲得を確定させた。

 しかし、高梨のジャンプが終わると向かい風が急に強くなってきた。そのために次のアルトハウスの時はゲートを23番に下げたが、秒速1.13mの向かい風という条件で106mを飛んで252.6点。ルンビの時はそのゲートを22番まで下げたが、向かい風はさらに強くなって1.36m。ヒルサイズ超えの110mを飛んで圧勝という形になった。

 高梨はそのふたりと同じくらいの向かい風が吹く条件なら、「納得できるジャンプだった」と言うだけにもっと飛距離を伸ばし、メダルの色も変わっていたはずだ。日本チームの鷲澤徹コーチも「試合での2本のジャンプは、今シーズンでもトップに入るようなジャンプをしていたのでもう少し天候に恵まれたら、という感じでした。でも高梨は飛び終わったあと、晴々とした顔をしていたので、その点はよかったと思います」と話した。

「次の目標は北京の金メダル」と明るい表情で口にした高梨。4年前のソチ五輪当時の自分に声をかけるとしたら何と言いたいか、という問いに「楽しく飛べたよと言いたいです」と答え、満足げな笑みを浮かべた。

 4年越しの五輪のメダルは高梨にとって、それが何色だろうと次へ向かって進む大きなエネルギーになるものだった。

連載記事一覧はこちら>>

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る