原田雅彦「頭のなかは真っ白になった」。冬季五輪で大失速となったスキージャンプ団体最後のジャンプ (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

「4番手に原田を選んだのは、世界チャンピオンだからという理由。各国のエースが出てくる4番手は、当然のように前の組よりスタートゲートが下げられてロースピードのジャンプになる。あの時は葛西も絶好調ではなかったので、その条件に一番対応できるのはエースの原田だとなるのは定石でもあったと思う」

 小野がこう話す裏には、他国が戦力的に弱い1番手と2番手に好調な西方と岡部を当てれば、先手を取って主導権を握れるとの狙いもあった。

【踏み切った瞬間「ダメだ」】

 試合はその期待どおりに展開した。1本目は3人とも各組トップの飛距離のジャンプを見せ、葛西が終わった時点で2位ドイツの16.9点差をつけた。最後の原田はバイスフロクが131mを跳んだドイツに逆転されたが、K点越えの122mを飛びその差を0.8点に抑えて2回目につないだ。

 2回目のジャンプになると、日本チームの狙いは完全にハマった。最初の西方が135mの大ジャンプでドイツを逆転すると、次の岡部も133mで66.5点差に広げた。1本目に128mを飛んでいた3番手の葛西は、前のふたりの大ジャンプに少し力んだのか120mにとどまったが、それでもドイツとは55.2点差。飛距離に換算すれば30.5m差と、日本の金メダルは確実な状況になった。

 最後の組のジャンプは、それまでの得点が低い順に飛ぶため、最終のジャンパーは原田となった。その前に飛ぶバイスフロクは、原田に「コングラチュレーション」と声をかけてからスタートをきった。のちに海外メディアから原田にプレッシャーをかける行為だったと批判もされたが、自分が130m越えの大ジャンプをしても、原田は、K点以上は飛んでくるだろうと考え日本を逆転できない負けを認めての言葉だったのだろう。

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