「心から相撲を愛しています」大横綱・白鵬が語る、自らの土俵人生と今後

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

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大相撲・外国人力士物語
第10回:白鵬(3)

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幕内優勝は史上最多の45回と、まさに角界屈指の"大横綱"となった白鵬。その偉大な横綱が、2021年名古屋場所(7月場所)を最後に現役から退いた。現在は、間垣親方として後進の指導などにあたり、日々奔走している。そんななか、自らの相撲人生について改めて振り返った――。

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 私が尊敬する人物は、大鵬関の他に、もう1人います。昭和の時代、「角聖」と呼ばれた大横綱・双葉山関です。

 1年に2場所しか本場所がない時代、優勝12回。さらに、昭和11年(1936年)~14年(1939年)にかけては、69連勝という不滅の記録を残した伝説の方でもあります。

 2010年、春場所(3月場所)、夏場所(5月場所)、名古屋場所(7月場所)に続いて、秋場所(9月場所)も全勝優勝を果たした私は、連勝記録を「62」まで伸ばしました。

 こうして臨んだ九州場所(11月場所)は、初日、栃ノ心から白星を挙げて、63連勝。2日目は、稀勢の里(現・二所ノ関親方)戦です。

 初めて稀勢の里と対戦したのは、彼が本名の「萩原」で取っていた幕下時代(2003年秋場所)。幕下同士の相撲なのに、土俵に上がると、たくさんの報道陣がいるのが見えました。スピード出世中の萩原は、それだけ注目されていたわけなのですが、取り直しの末、私が勝った。

「あ、なんかすごいコに勝っちゃった!」

 そんなイメージでしたが、その後も決して取りやすいタイプではなかったですね。

 64連勝をかけた一番は、相撲の流れのなかで、私は一瞬「勝った!」と思ったんですね。それが、結果的に黒星につながりました。

 私は土俵下まで飛ばされ、頭が真っ白になるなかで浮かんだ言葉がありました。

「これが負けか......」

 その晩は、一気に疲れが出て、翌朝は稽古場に降りたくない気持ちでした。でも、一念発起し、稽古場に向かうと、雲ひとつない青空が広がっていました。

 双葉山関の69連勝には届かなかった。ですが、それは一生懸命やった結果。そんなことに関係なく、地球は回り、また新しい1日が始まっている。私の気持ちは、吹っ切れました。

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