ポスト野口啓代は誰だ。次々と台頭してくる五輪メダル候補の10代クライマーたち (2ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 荒木優一郎●撮影 photo by Araki Yuichiro

青柳未愛/2003年8月26日生まれ/都立府中東高青柳未愛/2003年8月26日生まれ/都立府中東高この記事に関連する写真を見る【ケガでどん底を味わった18歳】

 ボルダリングの過去大会の順位は奮わないが、課題ごとに久米の動きを見ていると、ポテンシャルの高さには驚かされる。161cmの体を独創的に使い、課題のなかでもっとも難しい動きを求められる核心部をあっさりと攻略するからだ。

 そうかと思えば、比較的容易な動きに苦戦して完登を逃すシーンも少なくない。原因は競技課題の経験不足。ムーブの引き出しの偏りが大きいゆえに、独自ムーブがハマれば核心部を超える反面、場数をこなしていれば誰もが簡単にクリアする動きに苦戦してしまう。そしてこれは、久米自身も理解していることでもある。

「スラブなどの繊細な動きや、ボテなどの大きいホールドへの苦手意識をなくせるよう、いろいろな課題に触って自信をつけたいです」

 2022年以降の飛躍に向けてそう語る久米は、最近はさまざまなボルダリングジムへ足を運んで競技経験の少なさを補完している。

 青柳は大ケガを負ってどん底を味わった経験を、成長へと変換してきた。中学3年で出場した2019年1月のボルダリングジャパンカップ(BJC)で競技中に左ひざを骨折して最下位。半年以上のブランクを経て復帰し、2020年2月のBJCでは12位。同年コンバインドJCで5位になって2021年4月までの第1期パリ五輪強化選手にも名を連ねた。

 コロナ禍で国際大会は中止になったが、五輪強化選手になったことで青柳の競技への取り組みに変化が生まれた。マイペースで勝負に淡々とした性格だが、国際大会出場を公言するようになり、目標に向けてトレーニングにも打ち込むようになったという。

 青柳の特長は、コーディネーション系課題の強さ。バランス感覚とタイミング、そして163cmの身長を生かして核心部を攻略する。一方でフィジカル的なパワーを求められる課題には苦しむ。青柳自身も「強傾斜でのパワーやホールドを抑え込む動きでのパワーが足りない」と自覚し、そこを高める努力をしている。

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