竹﨑由佳アナが振り返る2021年スポーツ名場面。「同じ女性としても憧れます」と語る選手とは? (2ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi
  • 立松尚積●写真 photo by Tatematsu Naozumi

五輪では、新種目の競技も印象に残っているそう五輪では、新種目の競技も印象に残っているそうこの記事に関連する写真を見る──卓球以外で印象深い名場面はありますか?

 2つあります。1つ目は、新種目のスポーツクライミング女子複合決勝戦。野中生萌選手と野口啓代選手が最終種目を終えて結果を待っている時の姿と、表彰台が決定した瞬間に金メダルのヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)選手を含めた3人での涙の抱擁シーン。彼女たちがここまでくるのにどれだけの努力を積み重ねてきたかがわかりますし、それ以上にクライミング界の絆ってすごく強いんだなと思いましたね。それにこの決勝は、野口選手の引退試合という意味合いもありましたから、普通の試合とは違う重みがあったんじゃないかと思います。

 続けて同じく新種目のスケートボード。それぞれトリック(スケボーの技)を終えたあとに、まわりの選手たちが集まってきて「よくやった!」と賞賛するシーンは印象深いですね。これまで見たことがない光景だったので、各メディアからも大きく取り上げられていましたし、10代の女の子たちが切磋琢磨し合っている姿は美しいなと。すごく心に残りました。西矢椛選手、四十住さくら選手の10代コンビがメダル獲得というのも衝撃的でしたね。

──どちらも今まであまり陽の当たらなかった新競技。ライバル関係ではありながら、選手全員で競技を盛り上げようという想いの強さを感じます。

 実際に盛り上がりましたし、その影響はすぐさま現れていると思います。というのもこの間、江ノ島にロケに行きまして。そこで8歳ぐらいの女の子が、お父さんとお母さんに支えられながらスケボーに乗って練習していたんですよ。きっと、西矢選手たちの活躍している姿を見て挑戦しているんじゃないかと思うんです。これは、五輪選手たちの頑張りの証。私はそれを見たとき、五輪をきっかけに何かを始めた人、競技に興味を持った人たちの熱を絶やしてはいけない。今後もずっと続いていくように、スポーツの魅力がしっかり伝わるようなニュースを届けていかなければと、改めて思いましたね。

──新たなスター誕生に向けて、すでに好循環が生まれていたわけですね。

 そうなんです。それで言うと、東京パラリンピック卓球女子日本代表で女子クラス11(知的障がい)で銅メダルを獲得した伊藤槙紀選手もそのひとり。もともとパラ卓球選手として活躍していましたが、2008年北京五輪で見た平野早矢香さんのプレーが、パラリンピックを目指す大きなきっかけだったらしいんです。先ほどのスケボーの話でもそうでしたが、オリンピアン・パラリンピアンの活躍、その一つひとつのプレーが、こうして次世代のメダリストを生んでいるんだなと実感しました。

 伊藤選手には試合直後にインタビューさせてもらったんですけど、「次出たら絶対金メダルを獲ります」と悔しさはありながらも、すぐに3年後を見据えていました。その切り替えの早さと志の高さには驚きましたし、障がいを持って制限がありながらも、「できない」と決めつけることなく前を向いて挑戦し続ける心。このコロナ禍で生活を送る私たちにとっても必要なことですし、何より大きな勇気をもらえましたね。

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