フェンシングをメジャー競技にするために。武井壮が語った「3つのシステム」の構築 (3ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 松永光希●撮影 photo by Matsunaga Koki

 どんなスポーツでもスクールなどに通う場合は月謝がかかりますが、フェンシングが他のスポーツと同じくらい月々にお金がかかるとしたら、フェンシングを選んでもらえることは少ないと思います。だからフェンシングを「ちょっとやってみたいな」と興味を持つ人たちに、「あそこは無料でできるから行ってみよう」と思ってもらえる場所を提供する。そんなフェンシングパークを全国に作っていきたいと思っていて、福岡がその第一弾になります。

――第一弾として選んだ福岡市は、競技が盛んな街なのでしょうか。

武井 福岡はむしろ盛んではないほうですね(苦笑)。日本代表の選手は何人も輩出していますが、フェンシング部がある高校は2校、大学は1校しかない。でも、逆にそれだけ開拓の余地があるということです。フェンシングパークで高校生を集めた講習会を開いたり、新たにフェンシング部を作る学校のサポートをしたり、協会からコーチを派遣したり。その費用を部費から出していただくといった形も可能だと思います。

――それらを実現するための、資金を集める方法や枠組みはどう考えていますか?

武井 自治体や企業、個人事業主、保護者の方々などから、出資者として資金を提供していただくことを考えています。もちろん出資金の額には大小がありますが、例えば小口の出資者の方であれば月に1000円を出資してもらう。そのリターンとして、先ほど言ったように無料でフェンシングパークを使えるようにする、といった形です。パークを利用する方々には年間のフェンシング協会への登録費だけをご負担いただいて、全国のパークを無料で利用できる権利、選手として試合にも出てもらえる権利も手にしていただければと考えています。

 企業などに大きな支援をいただいた場合には、フェンシング協会に所属する金メダリストや私などが参加する、社員向けの「年1回の講習会と年4回イベント」といったパッケージをいくつか用意する。そうして利用者、出資者、協会すべてに"WIN"があるようにできればいいですね。

――選手のセカンドキャリアにもつながりそうですね。

武井 そうですね。選手はパークの事業主として活動する想定です。選手たちがプレーやコーチングだけでなく自ら営業もすることで、街の人たちや経済界の人たちとのつながりができる。そうすれば、選手を知る企業側から「雇いたい」というオファーがあるかもしれない。また、現役を離れたあともフェンシングを生業にした仕事がしやすくなると思います。協会としてはそれを実現して、"財産"の還流ができるようにしなければいけないと思っています。

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