フェンシングをメジャー競技にするために。武井壮が語った「3つのシステム」の構築 (2ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 松永光希●撮影 photo by Matsunaga Koki

――まず、「原体験を作る」とはどういうことでしょうか。

武井 前提としてフェンシングは、気軽に「やってみてください」とは言えない、参入障壁が高い競技です。日本にはフェンシング場が数えるほどしかなく、実際にやるには長距離の移動や、費用が必要になることが多い。道具に関しても剣、マスク、ユニフォームなどを揃えないといけないですし、施設側も採点システム、審判、ピスト(フェンシングの試合場)を用意しないといけません。

 そういった場所や道具がなくても多くの人が楽しめる、「フェンシングの手前」のレクリエーションを作ることが競技の普及には不可欠です。「手前」というのは、例えば野球ならばカラーボールとプラスチックバットでやる野球や、キャッチボールもそう。本格的に野球をやるきっかけになる、「原体験」となる遊びが山ほどあります。

 そういった原体験があると、一流選手のプレーのすごさがひと目で理解できるようになる。野球は自分で投げたり打ったりする経験がある人が多いからこそ、"二刀流"でプレーする大谷翔平選手が投げる球の速さ、打球が「規格外だ」とすぐにわかる。フェンシングにも同様の遊びの場や道具が必要なんです。

――フェンシングの原体験を作る遊びを広めるために考えていることは?

武井 競技で実際に使う剣より短い「剣のような」おもちゃを開発し、フェンシングに近いルールで遊んでもらえるようになることです。さらに全国大会を開いたりして、フェンシングのマーケットを広げたいと考えています。

 アイディアは十分に固まってきていますが、現段階でマーケットがないのに、製品を作って売ることはリスクしかありません。企業とレベニューシェア(リスクと利益を共有する契約形態)できないと成立しないので、今はプロダクトを作ってくれるパートナーを探しています。プロダクト開発は時間がかかりますし、日の目を見るのは僕の次の会長の時代かもしれないですが、少なくともその前段階まで話を進めたいですね。

――続いて「フェンシングパーク」についてですが、現在、福岡市で「フェンシングパーク福岡」という施設を開設するための準備(来年4月が目標)を進めているようですね。

武井 フェンシングパーク福岡は、無料でフェンシングを学べてプレーできる施設になる予定です。もちろん道具も最初は必要ない。さらに、協会に所属する日本選手権の歴代優勝者や、日本代表レベルのコーチからの指導も無料で受けられるようにする。この「無料」というのが一番のキモだと考えています。

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