金メダリスト橋本大輝が語った東京五輪の裏話。個人総合前夜は「体力・精神もきつく」ネガティブな感情だった

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 その進化について、橋本自身は「自分自身が世界のトップに立ちたいという目標があったので、いろいろ試行錯誤してやっていました」と話す。体操は練習でもケガのリスクがつきまとう競技。ケガを未然に防ぐために、自分で「ここまですればケガをする」という基準を作り、体の反応や疲労度をしっかり把握し、質の高い練習を着実に積み上げてきた。

「今年の冬は体が痛いとか重い日が続くことがあったけど、そういう時はなるべく感覚的な練習を多めにして体の負担を減らしたり、いろいろできることを探してやっていました。そこはほかの選手も工夫してやっているけど、僕自身も自己管理能力は、この冬で一番強くなったところかなと思います。それがDスコアの上がった要因だと思うけど、五輪前には最高で37.0点を出すまでになっていました。ただ体の故障などいろいろあったので、東京五輪では団体も個人総合も36.6点で臨んだけど、10月の世界選手権は37.0点で挑む予定です。もしそこまで戻せなかったとしても、来年、再来年にはもっと伸ばしていきたいなと思っています」

 来年以降へ向けてはルール改正もあってDスコアの得点基準は変更されるだろうが、今の計算で37.5点を超えるところまではいけると考えている。そんな橋本は今後への思いをこう語った。

「今回五輪チャンピオンになったことで、僕には五輪で3連覇できる可能性も出てきたと思います。それは前人未到だし、世界選手権でも今年から新しい連覇記録を作れる可能性があるので、目標にしていきたい。そのなかで勝ち続けるということより、自分の理想の演技を試合ですることを目標にしていけば、結果は自然についてくるはず。まずはどの試合でも自分のベストを出せるようにしていき、それを継続して3連覇のためにも、パリ五輪では個人総合と団体の金メダルを獲りたいです」

 東京五輪後の第一歩となった9月上旬の全日本学生選手権でもきっちり優勝して連覇を果たした橋本。

「インカレも絶対に優勝できるぞと思っていたし、さらにここから誰も達成していない4連覇を絶対に成し遂げたい。これから金メダリストとして勝ち続けていかないといけないし、周りからもそう言われるだろうけど、僕は負けるつもりもない。ちゃんと勝ち続け、いろいろな記録を作っていきたいと思います」

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