「モンゴル出身力士だから強いわけじゃない」豊昇龍が常に意識していること (2ページ目)

  • 武田葉月●取材・構成 text by Takeda Hazuki

 4敗目を喫した時は本当に悔しくて、無意識のうちに拳を土俵に叩きつけていたみたいですね。以前はそんなふうに、感情がよく表に出てしまったようです(苦笑)。会場やテレビで見た方は、「怖い」とか「感情の起伏の激しい力士だな」と思われたかもしれませんね。

 次の秋場所の番付は、幕下5枚目。勝負はまたしても7番相撲に持ち込まれたのですが、なんとか4勝3敗と勝ち越し。普通、5枚目で4勝では昇進は難しいみたいですが、十両に上がれたことはラッキーでしたし、こうした運を大切にしていかなければ......と思いましたね。

 2019年の九州場所(11月場所)、一緒に新十両に昇進したのは、埼玉栄高相撲部出身の琴手計改め、琴勝峰。身長189cm、体重159kgと体に恵まれていて、高校時代から目立っていました。同じ年齢で、新弟子検査を受けたのも同じ2017年の九州場所。その当時から意識していた相手だけに、「負けられない!」という気持ちが強かった。

 それなのに......。3日目に琴勝峰と対戦して負けちゃった。それから彼は、すぐに幕内に上がって大活躍するんですが、今は(十両で)ちょっとスランプなのかな? 基本的に彼は人見知りなんだけど、僕にはいろいろ話かけてくる、いい仲間でもあるんです。

 僕が新十両に上がった場所、再十両を決めたのが、部屋の兄弟子、天空海関でした。部屋のいろいろなルールを教えてもらった兄弟子と一緒に十両の土俵に上がれるのは、うれしかったです。

 そして、十両4場所目となった2020年七月場所(注:新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、東京・両国国技館で開催)、夢のような出来事が起こったんです。

 この場所、僕は14日目を終えて9勝5敗。千秋楽で4敗のふた力士が敗れたことで、5敗の6人で優勝決定戦を争うことになったのです。

 その6人のうち、3人が立浪部屋。幕内から十両に番付を下げていた明生関と、天空海関と僕。2人の兄弟子とは、場所前「3人で優勝決定戦ができたらいいね」なんて、冗談を言っていたんですが、まさか本当にそうなるとは......。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る