東京五輪での出番が消えた「幻のチアチーム」。出演が全カットされるまでの準備と解散までの記録 (3ページ目)

  • 森大樹●取材・文 text by Mori Daiki

 MEMEさんは今回のパフォーマンスに向け、最終的に4曲を選定した。選曲は日本のアーティストを使う方針で、最初に10曲ほどの候補を出し、五輪におけるNG要素が含まれていないかチェックが入る。内容は、チアらしさを見せるためにポンポンを使用したり、日本らしい演出を要素として盛り込んでいる。

「実は演出で和傘を使おうとしたのですが、長くて硬いものは武器になるかも知れないとセキュリティチェックに申請を出す必要がありました。ヘアメイク用のコテなんかも確認しなくちゃいけなくて、それは国際大会というか、オリンピックならではでしたね」

 さらにもうひとつ、チアパフォーマンスを作る上で難しかったのが具体的なタイムスケジュールがわからない点だった。

 5人制バスケットボールであれば、全体の試合時間やクウォーター数は変わらない。パフォーマンスもそれに合わせて曲数や長さも決まってくる。

 しかし3x3の場合、試合時間は10分ではあるが21点を先取すればその時点で「KO勝利」となるため、ゲーム時間が巻いて終わってしまうこともあるのだ。そういった部分を考慮した演技構成を行なえる人材として、スポーツの試合での演者、ディレクター経験があるMEMEさんは適任だったということだろう。

 一時解散を経て2021年2月から再始動し、開催を信じて準備を進めてきたMEMEさんとメンバーだったが、緊急事態宣言が発令され、東京五輪は無観客で行なわれることが決まった。それに伴って現場でのリハーサルと本番を残し、出演はなくなった。

 言葉の端々にやり場のない悔しさが滲む一方で、彼女たちがその判断に納得できたのには理由がある。

「(カットになる)可能性はあると言われていたので心づもりはしていたつもりですが、エンタメは立場が弱いというか、こういう場合にいつも悲しい結果になってしまう。地位が低いように感じてしまうところはあります。それでも私たちが納得できたのは、組織委員会の人たちが最後までどうにかパフォーマンスを残せるように粘ってくれたからです。

 3x3を盛り上げようとエンタメの部分でもいろいろなチャレンジを入れようとしてくれて、私たちがこれまでやってきたことを『そのままオリンピックでやろう』と言ってくれたんです。出演カットについても、私たちと同じくらい悔しく思ってくれていました。

 だから私たちも受け入れられたし、会場にも観に行かせてくれて、あらためて一緒にできてよかったと思います。メンバーからも『残念』という言葉はもちろん出ましたけど、文句は一切なかったです」

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