補欠登録で「僕は、必要なのか?」と苦悩も。宇山賢が振り返るフェンシング男子エペ団体の金メダル (3ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文 text by Shiratori Junichi
  • photo by AP/AFLO

――少し話が逸れますが、フランス代表選手は、トリコロール柄のマスクを着けていましたね。あれでは表情が見えづらくなるのでは?

「確かにペイントされたマスクは表情が見えにくいですが、ルール的には問題ありません。日本が使っていた黒いマスクは、新品では相手の顔が見えることがあって、目線によって相手の動きを予測できることもあります。ただ、一概に顔が見えたほうがいいというわけではなく、僕としてはマスクを狙う時に相手の顔が見えないほうがプレーしやすい。自分の顔を見られるのも嫌なので、マスクをヤスリで削って、顔が見えづらくなるように加工をしたこともあります」

――フランス戦の勝利は、エペの個人戦で金メダルを獲得したロマン・キャノヌ選手を封じたことも大きいと思います。上位選手が、団体戦で思わぬ苦戦を強いられる「番狂わせ」は、なぜ起こるのでしょうか?

「さまざまな要因が考えられますが、一番はエペで認められている『同時突き(0.04秒以内に双方の突きが決まった場合、両者にポイントが入る)』の影響が大きいと思います。個人戦ではシングルポイントを狙う選手が多いのに対して、団体戦でランキングの差がある選手との対戦や、チームがリードしている時には、『同時突き』を狙いにいく傾向があります。

 ただ、個人戦でシングルポイントを狙う選手が、団体戦で『同時突き』を求められると、ミスが発生しやすくなる。あとは『リードを奪わなければいけない』『チームの期待に応えないといけない』といった焦りから、本来の実力が発揮できずに終わるパターンとかですかね。団体戦には、個人戦とは異なる難しさがあると思います」

――続く韓国との準決勝では、第1試合に登場した宇山さんの活躍が、チームに勢いをもたらしましたね。

「第1試合で、韓国のエースである朴相永(パク・サンヨン)選手に2-1で勝利し、あとの2人に繋げられました。『自分で自分を褒める』わけではないですが、かなりの好スタートが切れたと思います。

 韓国には過去にも負けたことがあって、もっと厳しい試合になると予想していたのですが、第3試合までで10点差をつけられた。序盤のリードを生かして、優位な戦いを進めることができましたね」

――韓国に勝利(45-38)して銀メダル以上を確定させた時、「メダリストになった」という実感はありましたか?

「その時点では実際にメダルを手にしたわけではありませんし、他の国際大会と同じように、『久しぶりに韓国に勝って、決勝に行ける』という喜びが強かったです」

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