補欠登録で「僕は、必要なのか?」と苦悩も。宇山賢が振り返るフェンシング男子エペ団体の金メダル (2ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文 text by Shiratori Junichi
  • photo by AP/AFLO

――アメリカ戦では、序盤から積極的な攻めを見せました。

「個人的に『一番危ない』と思っていたのがアメリカ戦でした。選手同士がお互いのパフォーマンスを高め合うことがうまいチームなので、案の定苦しめられて......。僕が『4番手の選手』と思われて、そのままズルズルと負けると死ぬほど悔しい。

 限られた時間の中で少しでも得点を重ね、今までやってきたことを全部出しきるつもりでしたが、1点目がとれた時には『イケる』という感触があって。リードを守りにきていた相手にプレッシャーをかけながら、カウンター攻撃に徹しました」

――東京五輪の団体戦に向けて、どのような調整をしていたんですか?

「僕は個人戦での出番はなかったので、団体戦で対戦しそうな国の試合の動画や情報分析のデータを見て準備していました。大会前の合宿では、個人戦に向けたメニューがあった時に『僕は、必要なのかな?』と、気持ちが折れそうになったこともありましたが、『これは課題を見つけるための練習だ』と自分に言い聞かせ、気持ちを切り替えて練習を続けていました」

――先ほど「交代選手」という話が出ましたが、その立場の選手としてつらかったことは?

「周囲のみなさんに『五輪に行ってきます』と胸を張って言えなかったことが一番つらかったですね。『実際に試合に出るまでは、五輪代表選手ではない』という」

――アメリカに勝利し、準々決勝で世界ランキング1位のフランスと対戦します。日本はまたしても大逆転勝利(45-44)を収めました。

「フランスは、フェイントや複雑なテクニックを駆使してくるわけではないですが、距離の取り方やフットワークが抜群にうまく、シンプルな強さがある。背が高い選手が揃っている点も特徴です。東京五輪で対戦した国の中で、フランスとROC(ロシア・オリンピック委員会)は個人的に苦手意識を持っていましたから、僕にとっては『ハラハラドキドキの耐える展開』の試合でしたね」

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