星野リゾート代表が語る慶應大アイスホッケー部時代。主将としてレギュラーにこそ「改革」を求めた

  • 村上佳代●文 text by Murakami Kayo
  • 布川航太●撮影 photo by Nunokawa Kota

 結局、うまくいくチームというのは、「リーダーに対する納得感」があるんです。納得感がなければお互いに足を引っ張り合い、チームがまとまりません。

遠藤 とても大事な指摘ですね。星野さんが考える「いいチームをつくるリーダー」とは?

星野 優れたリーダーというのは、いわゆる「優秀な人」というよりも、チームをうまくまとめて、フラットな組織のなかでスタッフの力をフレキシブルに活用できる人だと思います。以前、そういう人にはどんな特徴があるのかを調べたところ、行動力と決断力がある人だとわかったんです。

遠藤 そういう人に対しては、チームが納得できると?

星野 何が本当にいいかはやってみないとわからないですし、予想外の結果が出ることもあります。ですから、まずは試してみる行動力が、リーダーとしての重要な資質です。「優秀な人」だと、全部を理詰めで予定調和的に進めてしまう傾向があり、そこが納得感につながらないんです。

 そして、試してみた結果がダメならすぐにやめる。スピード感のある決断ができると、チーム内にフラストレーションがたまりにくく、みんなが納得感を持てるんです。

遠藤 つまり、リーダーはオールマイティでなくてもいいと?

星野 そうですね。私自身、オールマイティどころか、市場の感覚を深く理解できていないかもしれません。そのかわり、顧客満足度調査は社内で共有するようにしています。数字として「見える化」することで、私が関与しなくても、スタッフが自分たちで改善をしていく。

遠藤 スタッフが主体的に動いて、勝手にまわっていくんですね。

星野 「星野リゾート 青森屋」におもしろい調理スタッフがいました。ある時、彼はお客様に出す料理のマグロを1枚ずつ減らしていったんです。今週は6枚、翌週は5枚+イカ、というように。何枚までマグロを減らすと顧客満足度が下がるかを調べて発表してくれました。そこから、お客様に満足してもらえる最低提供枚数が見えてきたんです。

遠藤 まさに、現場力ですね。現場が自分たちでいろいろ試して、合理的な答えを導き出す。トップダウンで「マグロは5枚にしろ」と決めるわけではないんですね。

星野 参考になるような指標やツールは提供しますが、あとは自分たちで判断してもらうんです。私たちの業界にいるのは、目の前のお客様に喜んでもらいたいという人たち。必要なツールを与えることで、育てなくても自然に動いてくれるんです。

 トップダウンであれこれ指示を出すと、スタッフの能力が100あるうち、30くらいしか発揮できない環境になりかねない。そうすると、本人はおもしろくないだろうし、成長もしない。100ある能力のうち、90、100を引き出す環境をつくれるのがいいリーダーであり、いいチームだと思います。

遠藤 自分たちで考えた結果だから納得感があるし、結果的にチーム全体の成長につながるんですね。

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