「これ勝ったんですよね」。見延和靖の「リオ五輪の悔しさ」から描いた未来像が日本フェンシング初の金となり実現した

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Getty Images

「それを見て気持ちに火がついた」と話す最後に出てきた加納は、一気に5ポイントを連取して逆転。そこからさらにじわじわと差を広げ、16ポイントを奪って45対39で勝利をもぎ取った。

 山田は、「普通ならアメリカ相手にあの点差はひっくり返せないけれど、諦めずに勝負する気持ちを忘れずにできたことは大きかった。宇山さんが『絶対にポイントを取ってくれる』と信頼していたとおりの戦いをしてくれた」と振り返る。

 どんなに強い選手でも、大きな大会の初戦は緊張する。だが日本は初戦を逆転勝ちしたことで、勢いに乗った。十分に体も動く全開状態で、王者・フランスと戦えたことがプラスになった。

 フランス戦は、前半から終始リードされる展開になったが、加納が「開いても3~4点差だったので、いつでも逆転は可能だと思って戦っていた」と振り返るように諦める気持ちはどこにもなかった。

 最後の加納が山田から36対38でバトンを受けると、拮抗したまま42対44と王手をかけられた。しかし、そこから粘り強く2ポイントを連取して44対44。最後の1本勝負に持ち込むと、それもしっかりと取って逆転勝ちをおさめた。

「フランスは世界ランキング1位で、フェンシングが国技と言っても恥じない選手が多いし、強い選手を続々と出してきている国です。これまでの五輪でも『フランスを倒さなければ金を獲れない』と、どの国の選手も口を揃えるように、エペ団体は本当に強いんです。だから、そのフランスに勝った瞬間、『これはちょっといける』と思いました」(宇山)

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