「飛ばないとうまくならないのに飛べない」。飛び込みの坂井丞、持病と闘いながら東京五輪でメダルを狙う (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

「正面に風除けがなかったので、風がとにかく強かったんです。健くんもその強風にやられて、ほぼ0点に近い演技に終わりました。その後、僕が飛ぶ予定だったんですけど、日本が『風の影響がひどく、もう1本飛ばせてくれ』と抗議したので、そこで自分が飛んでしまうわけにはないかない。風の影響を受けすぎたし、気温差も激しく、前では抗議している。板の上では待たされた僕は複雑というか、気持ちはぐしゃぐしゃでした」

 その影響を受け、坂井も失敗ジャンプとなり、総合22位に終わった。だが、五輪に出たことで得ることも多々あった。

「世界の選手たちからは、そういう環境でも文句を言わず、決勝に行くんだ、メダルを獲りに行くんだという気持ちの強さを感じました。自分はもともと外のプールが苦手ということもあって、会場に入った瞬間に苦手意識が出てしまった。その時点で負けていたのかなと思います」

 どんな状況でも動じない、勝ちにいくんだという気持ちの強さ。五輪で上を目指すためには欠かせない大事なものを学び、それを東京五輪までの5年間、育んできた。

そして、この期間、坂井はもうひとつ大きな山を上ってきた。

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