楢﨑智亜は完全勝利、野中生萌は日本新。東京五輪でメダル獲得に向けて視界は良好

  • 津金壱郎●取材・文・撮影 text & photo by Tsugane Ichiro

 野中は今年5月にアメリカで開催されたW杯スピードで8秒20をマークし、当時の日本記録を更新していたが、今回のSJOでは予選前に行なわれるプラクティスの段階から7秒台を連発。スピードで次の段階に達した要因を、こう自己分析する。

「アメリカでのW杯スピードでファイナルに進んで、速い選手たちから刺激を受けたことで壁を越えたような感覚があって。それからは頻繁に7秒台が出せるようになって、自分でも驚いています」

 そのうえで、野中は「東京五輪では、スピードは7秒台中盤のタイムを普通に出せるようになりたい」と語る。東京五輪でそれを実現できれば、スピード種目のスペシャリストを飛び越えて、ひとつでも上の順位を手にできる可能性が高まる。

 そして、それが3種目の各順位を乗算したポイントで争う東京五輪でのメダル獲得に一歩近づくことになると自覚している。

「五輪までの約1カ月でまだ改善できる点はたくさんあるし、それを改善できる自信もある。このまましっかり集中して最後まで駆け抜けたいです」

 男子では、楢﨑が圧倒的な存在感を示した。もうひとりの男子日本代表の原田海が指の状態を懸念して大会出場を回避したなか、楢﨑は万全な状態で歩んでいることを印象づけた。

 コンバインドでは予選を4位通過すると、決勝ではボルダリング、リードとも1位。予選のみ出場したSJCでは5秒90をマークし、出場選手中ただひとり5秒台を記録した。

「優勝できたことは素直にうれしいですね。だけど、リードの内容がよくなかったのは反省点。オブザベーションが完璧ではなかったから、フォールする直前に足順を確認する作業を入れてしまったし、それが足を滑らせた原因でしたね。ボルダリングはだいぶよくなってきたので、あとはリードでどれだけ粘りきれるか」

 東京五輪が1年延期になったなかでも、3種目すべてで順調にステップアップしてきたように映るが、楢﨑はこう引き締める。

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