「4大関時代」となった夏場所。錣山親方が躍進を期待する力士とは? (3ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 ご存知の方も多いかと思いますが、王鵬の祖父は大横綱・大鵬関。父親は元関脇の貴闘力と、まさに相撲一家の血を引いています。

「お祖父ちゃんに憧れている」という王鵬は、小学校1年生の時から相撲道場に通って、埼玉栄高では数々のタイトルを獲得しました。そして、高校卒業を待たず、2018年初場所(1月場所)で初土俵を踏みました。

 大横綱の孫ということもあって、注目度が高く、プレッシャーもあったことでしょう。同期生となる横綱・朝青龍の甥、豊昇龍(幕内・前頭5枚目)にはやや後れをとっていました。

 それでも、今年初場所でついに新十両に昇進。その際は5勝10敗で負け越して、ひと場所で幕下に戻ってしまいましたが、先場所の幕下で勝ち越し。今場所での十両復帰を決めました。

 通常、ひと場所で幕下降格となると、腐ったりするものですが、王鵬は挫折をバネにして見事な返り咲きを見せました。その分、余計に期待は大きいです。

 彼が所属する大嶽部屋は、錣山部屋から徒歩2分の場所にあって、以前は出稽古に来たこともありました。年齢は21歳。身長191cm、体重175kgと恵まれた体格の持ち主です。

 ただ、体そのものは、まだ出来上がっていません。そうした状況にあって、十両復帰を遂げたのは、やはりすごいことだと思います。

 彼には、お祖父ちゃんがどれだけ稽古して、あれだけの力士になったのか――その原点を見直して、もっと稽古で自分をいじめてほしい。誰もが認める逸材であることは間違いないだけに、兄(鵬山=三段目)、弟(夢道鵬=幕下)とともに切磋琢磨して、大きな力士に成長してほしいと思っています。

photo by Kai Keijirophoto by Kai Keijiro錣山(しころやま)親方
元関脇・寺尾。1963年2月2日生まれ。鹿児島県出身。現役時代は得意の突っ張りなどで活躍。相撲界屈指の甘いマスクと引き締まった筋肉質の体つきで、女性ファンからの人気も高かった。2002年9月場所限りで引退。引退後は年寄・錣山を襲名し、井筒部屋の部屋付き親方を経て、2004年1月に錣山部屋を創設した。現在は後進の育成に日々力を注いでいる。

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