BMXの畠山紗英が東京五輪でのメダル獲得へ使命感。「出るだけでは意味がない」という理由 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

 日体大に進学後の2018年、畠山にとってターニングポイントといえる大きなチャンスが訪れる。

「スイスのワールドサイクリングセンターでトレーニングを始めたんです」

 ワールドサイクリングセンターはスイスのエーグルに本拠地を置く、UCI(国際自転車競技連合)運営の自転車選手養成施設である。優秀なコーチ陣が多数在籍し、世界最先端のトレーニング設備を擁している。

 世界各国から有望選手を集めて強化し、トッププロへの道筋をつくることを目的としている。

「ここにはコーチから呼ばれた人しか来られないんですけど、新しくコーチになった元世界チャンピオンのリアム・フィリップスから『来てほしい』と言われて。まさか自分が選ばれると思っていなかったので、びっくりしました」

 そんな畠山がいま課題として取り組んでいるのが「スタート」だ。BMXのレースはホイールが20インチの小さな自転車で400mのダートコースを走るのだが、ジャンプやカーブがあり、レースは35〜40秒で勝敗が決まる。

 最大で時速60キロものスピードが出るなか、選手同士がぶつかり合って転倒するなど「自転車の格闘技」と言われているエキサイティングなスポーツだ。そのレースに勝つための重要なポイントが「スタート」と言われている。それゆえ、畠山が課題克服に時間をかけるのは、東京五輪でのメダル獲得のためには必然だった。

「レースは、スタートから最初のコーナーを曲がるまでに80%ぐらい(勝敗が)決まります。スタートで前に出ることができると、勝てる確率が高くなるのですごく重要なんです。でも、難しいんですよ......」

 「スタートヒル」という高さ8mのところに最大8人の選手が並び、スタートは"ランダムゲート"が採用されている。音声が流れたあと、シグナルが点灯してゲートが開くのだが、そのシグナル点灯までの時間はランダムでレースによって異なる。

 選手はシグナル点灯に呼吸を合わせてスタートを切り、かつ全力で坂を下って誰よりも前に行く必要がある。畠山はスイスのサイクリングセンターで、この「スタートダッシュ」の練習を繰り返していたという。

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