「マンガの世界?」北京五輪金メダル候補の新濱立也、自身も驚く急成長

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 ナショナルチーム1シーズン目の急成長は驚異的だった。平昌五輪代表から漏れた若い選手たちが代表組を抑えて表彰台を独占したシーズン初戦の全日本距離別で優勝。初出場のW杯帯広大会でいきなり3位になり、次の苫小牧大会では連勝し、一気に頭角を現した。

「あのシーズンは自分でも驚きました。500mは34秒79がベストだったけれど、それが1秒伸びた。500mでそれだけ伸びるのは並大抵ではないし、1000mも2秒5くらいは速くなりました。『自分の人生がこんなにうまくいっていいのか?』と思うくらいにとんとん拍子で。(すぐに更新されて)一瞬でしたが、世界記録を出した時は、『本当に大丈夫かな...』という恐怖感もありました。シーズンが終わってからは実感も湧きましたが、初めてのシニアの世界でこんなにうまくいって、これは『マンガの世界?』という気持ちは正直ありましたね」

 この2018ー19シーズンの新濱は、その非凡なパワーでスケートのブレードを壊したという逸話もある。

「もう3本くらい壊しています。他の選手が壊したというのはなかなか聞きませんね(笑)。(壊れたのは)見た目ではわからないですが、測定器で測るとブレードが波打ってしまっているんです。そうなるとまったく滑れない。2月上旬の世界距離別選手権の時に壊れて、下旬の世界スプリントの前に取り換えましたが、その大会の1本目の500mでは靴ひもを通すハドメが切れてしまって。体重とパワーが重なって無理がかかると、そんなこともあるんです」

 世界スプリントの1本目のレースは、新しいブレードを使った初レース。「正直怖かった」とも話していた。だが、34秒66で1位。翌日の2本目は記録を伸ばしたものの2位だった。初出場ながら総合2位という成績を残した。

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