再び休場の両横綱に代わって、錣山親方が三月場所で注目する3人の力士 (3ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 そもそも、協会の健康診断で体重を測定したのは先月のことですから、それから1カ月が経過した今、体重はもう少し増えていると思います。いずれにせよ、貴景勝にとって、一連の体作りの改革がいい結果につながることを願っています。

 平幕の力士に目を転じると、先場所、新入幕で技能賞を受賞した翠富士(前頭10枚目)がいいですね。身長171cm、体重117kgの小兵ながら、十両を4場所で通過。新入幕を果たし、「ふた桁(10勝)を挙げて、三賞を狙いたい」といった抱負を語っていましたが、有言実行で三賞を受賞したのはお見事でした。

 彼のお家芸は「肩透かし」。相手力士が出てくるところで身をかわし、相手の肩口をはたいて引き落とす技なのですが、タイミングと一種の勘が必要な技でもあります。先場所ではその肩透かしを9勝のうち4回も決めて、"翠富士=肩透かし"というイメージが定着しました。

 そして、今場所はどんなものかと思って見ていましたが、あの小さな体で相手を押していって勝つなど、見た目以上に前に出る力があること示していました。そうした正攻法の相撲もできるからこそ、奇襲的な肩透かしがより効果を発揮するんですよね。

 ただ、翠富士はまだ幕内2場所目。幕内力士たちに、彼の取り口が完全に浸透していない強みがあります。特に今はコロナ禍にあって、出稽古も禁止ですし、地方巡業もありませんから、先輩力士たちに研究される場が少ないのも大きいです。

 同じ小兵力士の炎鵬も、相撲を覚えられたことで、今や十両に陥落してしまいました。翠富士も、本当の意味での実力が問われるのはこれからでしょう。とはいえ、小兵力士が活躍すると土俵が活気づきますから、炎鵬の巻き返しも期待していますし、翠富士には自らも成長を重ねて、そのうち訪れるであろう"壁"を打ち破ってほしいと思っています。

photo by Kai Keijirophoto by Kai Keijiro錣山(しころやま)親方
元関脇・寺尾。1963年2月2日生まれ。鹿児島県出身。現役時代は得意の突っ張りなどで活躍。相撲界屈指の甘いマスクと引き締まった筋肉質の体つきで、女性ファンからの人気も高かった。2002年9月場所限りで引退。引退後は年寄・錣山を襲名し、井筒部屋の部屋付き親方を経て、2004年1月に錣山部屋を創設した。現在は後進の育成に日々力を注いでいる。

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