高梨沙羅が五輪プレシーズンに復活。好調を取り戻した3つの要因とは (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by APF/AFLO

 体重差で負けていた外国勢の助走速度にも、かつてのように時速1km以上も劣ることなく、ほぼ同じ速度が出せるようになった。

 平昌五輪後に取り組んできた「強い踏み切り」「助走姿勢改善によるスピードアップ」「テレマーク姿勢の改善」。これが、北京五輪プレシーズンのタイミングでそろい始めてきたのだ。

 2014年、17歳でソチ五輪に初出場を果たした高梨は、メダルも期待されたが4位。2018年平昌五輪は、W杯総合3位の成績で臨んだが、高梨の成長速度以上に女子選手全体がレベルアップしていた。特にジャンプ技術の向上に加え、恵まれた身体を生かした助走スピードの速さとパワフルな踏み切りでトップに躍り出たルンビや、カタリナ・アルトハウス(ドイツ)が強さを発揮した。

 結局、高梨の2回目の五輪の結果は銅メダル。ソチから一歩前進したものの、本気で金メダルを狙いにきていたからこそ、涙が溢れた。勝つことの難しさを改めて感じた高梨は、ジャンプの改良に取り組んだ。まず着手したのは、ルンビやアルトハウスのような、「力強い踏み切り」をすることだった。

 だが、力強い踏み切りを意識すると、上半身が先に動いて空中姿勢を作るまで時間がかかり、空気抵抗を受けて前進する速度は減速する。当時、高梨自身も「上体が跳ね上がるように立ってしまうから、流れの中でスムーズに立てるようにしたい」とそのことを認識していた。

 その後、選手全員の競技レベルが上がったことで、これまでよりスタートゲートが下がって助走速度が抑えられる試合が多くると、高梨は伸び悩んだ。2018−19シーズンは、W杯で1勝したものの3月の世界選手権は6位、W杯総合は参戦以来最低の4位だった。

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