本橋麻里がメンバーの前で涙。「真剣に悩んでいる様子を見てたから」 (4ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・構成 text by Takeda Soichiro
  • 藤巻 剛●撮影 photo by Fujimaki Goh

「2019年大会は『中部電力さんが強かった』というのが第一。ただ、ロコ・ソラーレにとって、"難しいシーズンだった"というのもあったかもしれません。平昌五輪を終えて、予想をはるかに超える盛り上がりを見せて、チーム関係者全員が準備不足でした。自分たちが欲しているものと、世の中が欲しているものとのズレがあって、集中力が分散してしまった部分もありました」

――本橋さんがよく口にする"4年に一度の副作用"みたいなものが影響したのでしょうか。

「うまく言えませんが、あの盛り上がりを経てしまったら、次は世界選手権で勝つこと、オリンピックでさらにいい色のメダルを獲ることを期待されるのは、自然なことかもしれません。それは理解しているつもりですが、『おめでとう。次、4年後は北京だね』とあっさり言われてしまうと、その間には『日本選手権も、国内大会も、海外ツアーもたくさんあるんだけどな』と思ってしまうんです。期待されることは本当にありがたいことなんですが、オリンピックのメダリストとして求められているものと、自分たちが欲しいものへと向かうスピードとの差があったのは確かだと思います。

 4年という時間は、決して短い期間ではありませんし、その間に何が起こるかなんて誰にもわかりません。勝ち続けることなんてできるわけがないですし、調子が悪い時期だってあります。心身のバランスを崩した時に、選手として機能しなくなるのが、いちばん怖いこと。ですから、今トップでやってくれている4人には、本当に心も体も健康でいてほしいと願っています。そして、その中で見えてくるもの、人生観であったり、カーリングへの向き合い方だったりを大切にしながらプレーしてほしいと思っています」

――優勝した日本選手権を含めて、昨シーズン(2019-2020シーズン)はその辺りの整理ができていたのでしょうか。

「負けたゲームを掘り返すのは、選手にとってはなかなか難しい作業なんですが、きちんと振り返って、その作業ができたのは、あの4人の強さです。悔しかった気持ちと、真っ直ぐに勝ちたいという気持ちと、彼女たちは深いところで両方持っていたのだと思います」

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る