2020.10.27

体操ニッポン復活のリオ五輪。内村航平が切り拓いた「新時代」

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

 それでも選手たちは、それほど不安を感じていなかった。内村は「ロンドンの予選では、一人ひとりのミスの原因がわからなかったが、今回(リオの予選)は原因がはっきりしていたので開き直れた。五輪経験者が4人いて、健三も世界選手権に出ていたので、経験がものをいったと思う」と振り返る。また、白井は「皆予選でミスをした分、これ以上は落ちないだろうと考えた」と話した。

 ただ決勝は、やや不安をのぞかせるスタートになった。あん馬で内村がガッツポーズの出る演技で15.100点を出したものの、次の山室が終盤に入る手前で落下。選手たちの表情は硬くなった。最後の加藤は踏ん張り、合計で予選より0.366点だけ低い得点に抑えた。次のつり輪では、田中の14.933点を筆頭に山村と内村も予選以上の得点を出し、合計は予選を0.466点上回ってあん馬の失点をカバーした。

 選手たちに笑顔が戻ってきたのは、予選で全チーム最高得点を出していた跳馬を終えた時だった。最初の加藤が15.000点でまとめると、内村が15.566点、白井は15.633点と力を見せた。ライバルの中国は3種目目のつり輪でユウ・ハオが予選より1点低い14.800点にとどまって、3種目終了時点の合計得点では6位と順位を上げられないでいた。それに対して日本は、あん馬で6位発進のあとは、同じローテーションのロシアに2.033点差の2位まで上げていたのだ。

 次は、予選で6位の得点だった平行棒。水鳥寿思(ひさし)監督は「跳馬で15点台が並んで勢いがついたが、ターニングポイントは平行棒の田中。予選で失敗した彼が、平行棒で成功するかどうかが一番大きかった」と後に話した。

 田中は1番手で登場すると、予選を2点以上越える15.900点の完璧な演技を見せ、チームを流れに乗せた。続く内村と加藤もきっちりと15点台を出し、結果的には平行棒を得意とする中国にも、1.100点迫られるだけに抑えた。