激戦必至の秋場所。錣山親方の本命はようやく本領を発揮し始めた正代 (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 長年の私の期待が、ようやく目に見える結果として出始めたのが、関脇・正代の躍進です。今年の初場所では千秋楽まで優勝に絡む活躍を見せましたが、私が見る限り、春場所(3月場所)あたりから、体つきもがっちりとして、相撲っぷりも変わってきたように思います。

 正代と言えば、実力はあるのですが、闘志を表に出さないタイプなので、これまではやる気があるのか、ないのか、わかりづらいところがありました。そうこうしているうちに、年下の貴景勝や、同じく年下で、学生時代に競り合っていた朝乃山に抜かれてしまい、彼らが先に大関に昇進。さらに、2人とも優勝を経験しました。

 そんな2人の姿を見て、おそらく正代の心の中にも「あいつらができたんだから、オレだって......」という意欲がやっと湧いてきたのではないでしょうか。そうした思いが結果にもつながり始めて、初場所で優勝争いに加わった経験がまた、大きな糧になったと思います。

 そして今場所は、ひと皮むけた正代の姿が土俵上にあります。「優勝に一番近い力士」と言ってもいいでしょう。

 V候補の二番手を挙げるとしたら、関脇・御嶽海です。

「大関候補」と呼ばれて、すでに3年ほど経過したでしょうか。彼が"強い"ということは、皆が認識していることですが、これまでの彼からは、大関取りについては"他人事"といった雰囲気が感じられました。

 でも、七月場所では関脇で11勝。ここからふた桁勝利を続ければ、大関が見えてきます。その辺りは、本人も自覚しているはずです。

 御嶽海が所属する出羽海部屋には、関取が彼ひとりのため、場所前は出稽古がメインとなっていましたが、ここ数カ月は新型コロナウイルス感染防止のため、出稽古は禁止となっています。そうした現状は厳しいかと思いますが、置かれている状況は皆、一緒。御嶽海にはそれを言い訳にすることなく、奮闘してもらいたい。

 過去2回の優勝が物語っているように、集中力は抜群の力士です。ふた桁勝利を最低限として、それ以上の成績を残してほしいところです。

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