野口啓代、八王子で復活の狼煙。東京五輪で「女王帰還物語」完結へ (3ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO


 上位には入るものの、野口は勝負どころで苦手な課題を攻略できずに、以前まで定位置だった表彰台の中央からは遠ざかった。

 ただ、それでも東京五輪での成功に照準を合わせる野口は、目先の結果に左右されず、苦手な課題を克服するため、必要な能力を高めるためのトレーニングに励んできた。

 その成果が発芽したのが、2018年シーズンだった。

 W杯ボルダリング第3戦(中国・重慶大会)で3年ぶりの優勝を果たすと、第4戦(中国・泰安大会)では覚醒を予感させるパフォーマンスを見せたのだ。

 第3戦での決勝課題は、2015年までに見られた保持力勝負の内容で、こうした課題に野口が抜群の強さを発揮して優勝したことに驚きはなかった。だが、第4戦での決勝課題は野口の苦手とする、身体の使い方が求められる課題が盛り込まれていた。それが第3課題だった。

 第3課題はスタート直後、右方向へダイナミックな横移動が求められるもので、ここが核心部だった。

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