野口啓代、八王子で復活の狼煙。東京五輪で「女王帰還物語」完結へ (2ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO


 故障もあって2015年シーズンかぎりでの引退を考えていたが、スポーツクライミングの東京五輪実施が決まったことで、競技生活を東京五輪まで継続することを決意した。

 しかし、待っていたのは茨の道だった。

 五輪種目になったこともあって、W杯ボルダリングの課題は、従来まで主流だった強傾斜壁での保持力勝負から、ダイナミックに身体全体を使うことが必要なコーディネーション課題や、足のみでバランスを保つような課題へと変化した。

 野口の特長は、指先でホールドを掴む保持力の抜群の強さにある。これを起点にして、身長165cmの手足の長さと柔軟性を生かしながら、課題を登っていく。こうした強さはW杯ボルダリングの長いキャリアのなかで培われたもので、いまだ野口の右に出るものはいない。

 だが、それだけでは勝てないと時代になった。

 野口の最大の武器が生きる課題は減少し、苦手な動きが求められるようになったことで、2016年のW杯ボルダリングは未勝利で年間4位。2017年は年間3位になったがまたも未勝利で、W杯ボルダリングのキャリアで初めての予選敗退も味わった。

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