そうだったのか! 楢崎智亜が「無双状態」になるまでの進化の過程 (5ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO


 それまでの楢崎のスメアは、すっぽ抜けるイメージが強かった。だがこの課題では、体勢が悪すぎて高度は稼げなかったものの、右足はしっかりとスメアを効かせていた。

「短所を補い、長所を伸ばす」

 言葉にするのは簡単だが、練習量の割合が短所に偏り過ぎれば長所を失う、極めてデリケートなものだ。日本代表になるトップ選手ならば、なおさらだろう。

 その難しい取り組みに対して、楢崎は自身の特長であるダイナミックムーブや、ホールドを触った瞬間に指先で一発で掴むコンタクトストレングスの能力を低下させることなく、対極にあるスタティックムーブを磨き上げた。しかも、それを実戦で繰り出せる。

 これは一朝一夕に高められるものではない。長い年月をかけて取り組んできた成果だろう。

 2016年の華々しい活躍もあって、楢崎は優勝回数が多いと思われがちだ。しかし、W杯ボルダリングの優勝は、2017年はゼロ、2018年と2019年は各1勝しかない。対して2位は2017年が4回、2018年は2回、2019年は3回。

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