2020.05.25

内村航平が「魔物」を倒したロンドン五輪。
最後にやっと納得の演技

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

 じつは、この決勝で内村が演じた6種目の合計得点は92.048点。予選の個人総合で1位通過のダネル・レイバ(アメリカ)の得点より0.783点高かった。それでも、いつもの内村ならピタリと決める着地を、しっかり止められない種目が多かった。

「ポディウム(公式練習)や予選の失敗から、どう修正しようかすごく考えました。いつもは自然に(調子は)合っていくものだけど、今回は合わせなければ......と意識して調整をしました。苦しいというよりも、練習でできていたいい動きが試合で出ないのは初めての経験だったので、ちょっと不思議に思ったし、着地もなかなか止まらないので、自分にイライラしていました」

 それでも2日後の個人総合決勝では、気持ちを落ち着けて臨んだ。

「さすがに五輪だなと思いましたね。今まで以上のものを自分に期待していたので、そこがよくなかったとわかりました。だから、個人総合へ向けてはそんなに悩んだりしなかったし、気持ちも落ちてはいませんでした。今までのミスを挽回しようということだけだったし、そんなに結果にもこだわっていなくて、自分の演技をすればいいとだけ思えた。そこでようやくいつもどおりの気持ちで臨めたのかなと思います」

 5月のNHK杯で、観客席に向かって「どんどん期待してください。倍にして返します」と、平然とした表情で口にした時の自信が内村に戻っていた。