東京五輪、金メダル最有力の女子選手が
「家トレ」で太もも大幅アップ

  • 会津泰成●文 text by Aizu Yasunari

「世界選手権で優勝ができて『さあ次は東京五輪に向けて、より強くなるためにトレーニングしていこう』という段階でしたが、『もし延期されるのであれば、焦って練習しないほうがいいのではないか。でももし予定通り開催された時は、気持ちを切らせてしまうと準備が間に合わなくなってしまうのではないか』という不安や戸惑いでとてもつらい時期が続きました。

 自転車に乗っていても、『東京五輪延期』ということが頭の中でぐるぐるとまわって......。これからの不安と、考えていたプランが白紙になることに対して迷いが生じて、自転車で山に向かって走り出しても足に力が入らず、家に戻ってきてしまうこともありました」

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)への配慮から、東京五輪が1年程度延期されると発表されたのは3月24日だった。

 オムニアム部門で日本女子選手として初の世界女王となり、勢いに乗ったまま本番を迎えるはずが一転、迷いや焦りの中、苦しい時間を過ごすことになり、確実視されていた日本代表の切符もお預けになってしまった。梶原はそこからどのようにして『1年間、強くなるための時間ができました』と気持ちを切り替えたのか。

「延期が決まった翌日が、大学(筑波大学)の卒業式だったんですね。卒業式で久しぶりに友達とも会えて、『1年後になっちゃったけど、頑張ってね』と励ましてもらったり、卒業式に集まってくださったメディアの方々からは、東京五輪延期に対する思いを質問されました。

 最初はどう答えればいいかわからず、自分の中でいろいろな言葉を探して、つなぎ合わせるように答えていました。でもその1日で、たくさんの人に声をかけてもらい、取材を受ける中で、自分の思いがだんだんと明確になると、『1年間、強くなるための時間ができた』と捉えられるようになり、2021年に向けて気持ちを切り替えることができました」

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