奥原希望が劣勢から手に入れた新スタイル。
攻守融合の変化で勝利を飾った

  • 平野貴也●文 Hirano Takaya
  • photo by AFLO

 奥原は、高い球を選択して強打を打たせたが、ラリーを制していた。

「自分の体勢を考えて、計算して(打たせても自分が返球できる)高さを出せた。厳しいショットもこっちはディフェンスができて、相手は決めたくても決まらないというところでモヤモヤしたと思います」(奥原)

 低すぎず、高すぎないようにシャトルをコントロール。一見、相手のチャンスに見えたのは、誘い球だった。後方から強打した相手は、前方に広く空いたスペースを埋めなければならない。奥原は狙ってレシーブができれば、主導権を奪える。そして、体勢が崩れた相手の返球に対して、フットワークのスピードを上げて反応できれば、ショートカウンターで攻撃ができる。

 攻めたはずなのに主導権を奪えない相手は混乱し、相手に迷いが生まれれば勝負どころで、奥原がペースを上げれば仕留められる。仕掛けどころを意図的につくりつつ、攻め急がずに着実に決められるところを見極めた。

 好成績を残す一方で、ケガに悩まされた道のりは、振り返ってみれば、攻撃的要素をバランスよく加える進化の過程となった。21年に延期された東京五輪では、リオ五輪の銅メダル、世界選手権の金メダルを獲得した時とは、異なるスタイルで勝ち上がる奥原の姿が見られるに違いない。

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