新日程決定も課題いっぱい東京五輪。
「アスリートファースト」はどうなるか

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu
  • photo by Kyodo News

 また、選考会が1年延びたことで、アスリートの人生設計が変わることにもなるだろう。原則23歳以下で構成されることになっているサッカー男子の年齢資格はどうなるのだろう。また他の競技でも、ベテラン選手のコンディション作りやメンタルのケアなどに対し、周りのさらなるサポートが必要になる。

 北京五輪金メダルのソフトボールの日本代表のエース、上野由岐子は来年の五輪開幕時には39歳、5大会連続五輪出場を目指す女子重量挙げの三宅宏実は35歳となる。体力もだが、あと1年4カ月、気持ちの盛り上げがカギを握ることになる。

 理事会後、プロ野球・福岡ソフトバンクの王貞治会長は、新型コロナウイルスによる肺炎のために70歳で亡くなったタレントの志村けんさんについて「やっぱりショックですね」と悼んだ。また、東京五輪については、「流れを見ると、延期してよかったなと思っています」と言った。

「(ソフトバンクの活動中止に)これはね、やっぱり選手たちの健康が一番大事ですし、応援してくださる皆さんの健康にも関わってくることですから、ここは大事をとらないといけないということです。あとで振り返ったら、ちょっと大事をとりすぎたと言われるかもしれないけど、それくらいでちょうどいいんじゃないでしょうか」

 また、組織委の森喜朗会長は理事会の冒頭、こうあいさつした。

「まさに史上初めて、かつてない経験に我々は取り組むわけですが、人類がこれに打ち勝つ証として来年のオリンピック・パラリンピックを実現することが、東京2020組織委員会の使命と考えております」

 引き続き、理事会では今後の課題の確認が行なわれた。競技会場の確保を詰めていくことのほか、観戦チケットは原則、そのまま利用できるように検討を進めることとし、日程変更で観戦にいけない人には払い戻しを行なう予定とした。大会ボランティアはすでに決定している場所や役割で、来年も活動してもらう方針となった。延期されている聖火リレーも、既に走る予定だった人を優先的に起用していく方向だ。

 もっとも最大の問題は、新型コロナウイルスが来年、終息するかどうかだ。世界の流行によっては、再延期論も出てくることになる。ただ、二度目の延期は極めて難しく、その場合は中止となる危険性もある。

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