五輪メダルをドンドン増やす「国立スポーツ科学センター」って何だ? (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 伊藤晴世●撮影 photo by Ito Haruyo


 スポーツをサポートし、研究する機関としてJISSがモデルとしたのは、オーストラリアの国立スポーツ研究所(Australian Institute of Sport=AIS)だった。

「オーストラリアは初のオリンピック自国開催となった1956年のメルボルン大会で金メダル13個、銀・銅メダルと合わせて35個のメダルを獲得しましたが、そこから下降線をたどり、1976年のモントリオール大会では金メダル0個、メダル総数5個と大惨敗しました。それで1981年にAISを設立し、2000年のシドニー大会では金メダル16個、メダル総数58個まで躍進したという事例があったのです」

 JISSにはスポーツ科学研究施設として、ハイパフォーマンスジム、環境制御実験室、生理学実験室、生化学実験室、心理学実験室、映像編集室、体力科学実験室、陸上競技実験場、バイオメカニクス実験場、風洞実験棟などがある。

 メディカルセンター施設としては、リハビリテーション室、診察室、臨床検査室、栄養相談室、薬剤室、カウンセリング室、放射線検査室が完備され、そのほかサービス施設として、レストラン、宿泊室、会議室、スポーツ情報サービス室、研修室、喫茶室などが設けられている。こうした体制は世界の同様の施設と比べて、どの程度のレベルなのか。

「日本はイギリス、フランス、ドイツ、オランダ、ブラジル、シンガポール、香港などと連携協定を結び、人事交流や情報共有、お互いのカンファレンスに招待しあうなどして各国の情報を得ています。中国のCISS(China Institute of Sport Science)や韓国のKISS(Korea Institute of Sport Science)との間にもやりとりがありますが、いかんせん中国は国の規模がケタ違いです。

 アメリカの事情は少し違っていて、JISSのようなひとつの施設ではなく、州ごとに拠点となる大学があり、それぞれがナショナルトレーニングセンターのような役割を果たしています。また、ロシアからはまったく情報が入らないという状況です。

 どこが優れているかとなると明確な基準がないので難しいですが、連携している国や地域からそれぞれオリンピック選手団の団長クラスの方々がお見えになられて、みなさん一様に驚いて帰られているので、トップクラスであることは間違いないでしょうね」

JISS内にあるメディカルセンター/スポーツクリニックJISS内にあるメディカルセンター/スポーツクリニック

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る