初優勝、そして大関昇進――栃ノ心を栄光に導いた師匠のアドバイス (5ページ目)

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

 そうやって、ある意味"無欲"で挑んだことがよかったのでしょう。なんと、不戦勝を含めて11日目まで全勝。12日目には、これまで一度も勝ったことのない横綱・白鵬関と対戦し、寄り切り勝ち。人間、大事な場面になると、不思議な力が出るものなんですね。

 こうして、白鵬関まで撃破した私は、最終的に13勝2敗。敢闘賞と技能賞をいただいて、場所後には大関昇進の使者を迎えることになったのです。

 新入幕から所要60場所(10年)での大関昇進は、二代目・増位山関と並ぶスロー出世だそうで、私がいかにもたついたのかがわかる記録だとも言えますね(苦笑)。

「謹んでお受けします。親方の教えを守り、力士の手本となるように稽古に精進します」

 昇進伝達式での口上では、どうしても入れたかった「親方」という言葉を使いました。師匠からは、その部分は削除するように言われたんですけど、感謝の気持ちを示したかったので、私のわがままを通させていただきました。

 翌2019年6月には、1年ぶりに故郷に帰ることができました。そこで、生後7カ月の長女(アナスタシアちゃん)とも初めて会えて、本当に幸せだったなぁ~。

2度目の幕内優勝を目指して、今後の奮闘を誓う栃ノ心(写真中央)2度目の幕内優勝を目指して、今後の奮闘を誓う栃ノ心(写真中央) 大関に昇進してからは、ケガのため、なかなか好成績を残せず、2019年九州場所では、2度目の関脇への陥落となってしまいました。

 ここしばらくは平幕で相撲を取っていますが、もう一度優勝を狙えるよう、闘志あふれる相撲をみなさんにお見せできればと考えています。

(おわり)

栃ノ心剛史(とちのしん・つよし)
本名・レヴァニ・ゴルガゼ。1987年10月13日生まれ。ジョージア出身。春日野部屋所属。筋肉隆々の体と、豪快な吊り出しや上手投げで熱い人気を誇る。着物を着こなすファッションセンスと料理の腕前も注目を集めている。2020年春場所(3月場所)の番付は、西前頭9枚目。

5 / 5

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る